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今は亡きマックのCPUアップグレードカードメーカーNewer Technology社。
店長猪川がそのNewer Technologyに勤務していたころの汗と涙の物語。

<第一話>恐怖!共有されない情報

Newerで勤務を始めてすぐ、社内の情報の扱いにつてカルチャーショックを受けた。情報の共有の仕方が日本のやり方と全く異なっていたからだ。

まず猪川が仕事をする上で違和感を感じたのが”意志疎通が悪い”ことであった。会社が1つのエンティティーであるにも関わらず、ある業務に関する事柄にこの人はこうだと思っているのに別の人はああだと思っている。またある事柄をこっちの人は知っているのに別の人が知らないというようなことが日常よく発生した。またそういう事実を多くの人が当然と思っていた。わずか100人にも満たない会社にも関わらずである。

なぜ、このようなことが発生するかというと、会社全体や特定の部門で起きていることを全ての人に知らせる場が無いことが1点目。それから個人の情報を他の人と共有すると他の人の仕事がはかどるというような気配りが出来る人がほとんどいないということが2点目であった。

例えば定例会であるが、Newerで私が参加した定例会というのは週に1度、セールス部門で開く1時間弱の週例会だけであった。本来ならある部門の担当者が他部門の週例会に参加し、別の角度から情報を得るべきなのだが、ほとんどの人は別の部門の定例会に参加する必要もないと考えているし、他部門としても参加して欲しいとも思っていなかった。

メーカーがあるものを製品化する上でそれぞれの部門の意見を知ることは重要だ。エンジニアとしては傑作でも、営業サイドで全然需要のないものであれば意味がないし、マーケティングで製品の技術的な良さを理解できなければうまい宣伝が出来ない。しかし、それを知ってか知らずか、他部門に情報を進んで提供するようなこともなければ、そのような場もなかった。

私が働いていた日本の会社では、うっとうしいほど会議や定例会があった。部門として、課として、グループとして、そしてプロジェクト毎に週例会やら定例会があり、一日中打ち合わせで終わりなんていう日もあったほどだ。だからあまり関係なさそうな業務の定例会は断ることにしていたがそれにも苦労した。例えうまく断ったとしても定期的に議事録のコピーが回ってきてそこに書かれていることは知っていて当然のこととされた。たぶんそういうやり方は典型的な日本の会社の常識だと思う。ところがNewerではそんな常識は存在しなかった。

最初は会議が少ないため、自分の仕事に専念できることがうれしくて”これがアメリカの合理的な仕事の進め方だ!”なんて感心していたのだが、それもつかの間、すぐに自分の仕事に支障をきたすようになった。そして情報収集が私の大きな仕事の一つになった。

Newerでは社員が情報を共有することに対して意識が低いというか、共有することの重要性を知らないというか、共有をしたがらないというか、いづれにせよ情報が自分の所に独りでに回ってくることがない。

例えば、新製品を作っていく上で現在どのような進捗なのかという情報は大変重要だ。1カ月後に製品が完成するのであれば、技術部門は製品の仕様を確定させ、必要なドライバーなどもリリースする。マーケティングはマニュアルを製作し、パッケージングのデザインを行わなくていけない。営業部門は評価機器などを先行して確保し、代理店に送り評価してもらうことが必要だ。ところが、Newerでは新製品の完成が前日になって急にアナウンスされることが日常茶飯事だった。だから、製品が完成しているにも関わらず、ドライバーがない、マニュアルがない、評価機がないなどですぐに販売できる状態になっていない。そのため大急ぎでドライバーやマニュアルなどをリリースするから、ミスが出たりするのは当たり前だった。

逆に完成予定の製品が延期になるような場合、通常数週間前に延期がわかっているにも関わらず、前日になって延期になりましたというような話が出たりした。ひどい時は延期のアナウンスもないまま当日を迎え、製品が出来てこないのを不思議に思い製造の担当者に問い合わせると”あ、あれ延期になったよ”なんてことを言われたりしたものだ。完成の日にあわせて、きりきり仕事していた自分の仕事は無駄になることが良くあった。

だから自己防衛的に、自分でいろいろな部門の担当者に情報を聞き回る必要があった。しかしひどいことに自分で苦労して情報を収集してもそれが正しいとは限らないのだ。担当者の思いこみがあったり、情報がアップデートされていなかったりして、本当の情報は最後までわからなことがあった。で、結局何が一番正しい情報かというと当日に発生した事実だけなのだ。予定なんて何も信じられない。つまり全てのことは蓋を開けてみるまでわからないというのが事実であり、なんともお粗末な仕事の進め方なのである。

で、日本の代理店をはじめ、日本のお客様は情報に対して敏感かつ大変厳しい。特にネットの時代になってから、壁1つ隔てた技術部門の発言が私に伝わる前に、日本の代理店やユーザーに知れ渡り、私が日本サイドから教えられるという現象もしばしば起きた。しかし会社内部では新製品が発売直前にもなっても製品の仕様がわからない・製品に同梱されるものがわからない・発売時期もわからない、という”わからない三重苦”で私は苦労しっぱなしであった。こういう仕事の進め方は日本の会社では想像出来ないことなので、当時は代理店にそんな状況を信じてもらえなかったのだが、Newerの実体はこんな無茶苦茶なものだったのだ。それでもなんとか商売が出来ていたところに、ある意味で米国企業の底力を感じたわけなのだが。

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