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<第七話>唖然!マックを知らない上司

アップグレードカードはなまもの

さて、前回はPowerBook1400用2400用のアップグレードカードを代理店に言い値で買い取ってもらい、なんとか入金してもらうことが出来たところまで説明した。不本意ながらこれらのアップグレードカードの販売に対する猪川の役目もほとんど終わったように思えた。しかし、この入金に関してNewer内部で一悶着があったである。 

アップグレードカードというのは時間が経つと値段が大きく下がる性質の製品である。モトローラやIBMから新しいCPUが発表されるだけで、既存の製品が値下がりすることもある。なまもののような製品なのである。 

代理店や販売店ではそのような製品の取り扱いには大変気を使う。製品を販売するために在庫を持つ必要があるのだが、販売出来る以上の在庫を抱えると価値がどんどん下がり損してしまうためだ。なので、このような損を避けるために、代理店や販売店は出来るだけ在庫を少なくしようとする。しかし、店頭に在庫がないと売れる製品も売れなかったりする。あるお店でNewer製品の在庫がなく、他社の同じ性能のアップグレードカードが置いてあれば、在庫があるものを購入してしまうのがユーザーの心理である。 

そこで、メーカーは代理店や販売店に在庫を積極的に持ってもらおうと、”価格補填”を行うのである。これは、在庫にある製品の価格が下がった場合、代理店や販売店に対してその差額を補填(支払う)するというものである。 

例えば販売店がAという製品を1万円で仕入れたとする。しかしなかなか売れずに、お店の棚に残ってしまった。そして翌月、メーカーの価格改定があり、卸価格が9千円に値下がりした場合、メーカーはこの在庫を持っているお店に対して千円を支払うのである。つまりメーカーは製品の値下げをするときに、補填の出費をしなくてはならないのだ。 

ただし、在庫があるというのは代理店や販売店が買いすぎた、販売する能力が低かったという場合もあるため、全ての在庫に対して補填をするわけではないのだ。購入に対して特定の割合、例えば20%までの補填するなんていう決まりを作っておくのである。例えば20%の補填であれば、製品を5本購入すれば1本が売れ残っても補填してもらえるので販売店にしてみると多めに店頭に製品を並べることができるのである。 

差額の補填分を支払えない...

それで話を戻すが、PowerBook1400用2400用のアップグレードカードを代理店に言い値で買い取ってもらったわけだから、依託した時の価格と、実際に買い取ってもらった時の価格というのが大変な開きが発生したわけである。この差額が補填扱いになるのだが、もともと販売した価格の半分以上を補填しなくてはいけなくなったのだ。 

しかし上にも書いたとおり代理店に支払う補填料には上限があり、購入金額の半分以上を補填するなんていうのは前代未聞だったわけである。当然この補填に対し、銀行や会計部門などがいろんな人たちが文句を言ってきたのは言うまでもない。”もっと高く売れないのか”とか、”補填を出す代わりに別の製品を渡せ”などなど大変な反発にあったのだ。しかし、そんなこと言われても解決する方法は値下げしか無かったわけで、今更どうしようもも出来なかった。 

すったもんだの末にこの時販売部門の副社長だったジェフ・ヘデレスキーが会計部門を説得し、補填を支払うことで決着したのである。 

新上司の加入で話が複雑に

しかし、この一悶着の時にたちが悪かったのが、ちょうどNewerに新しく採用された販売部門のディレクター、ジム・ダナタリーが口をはさんで来たことであった。ディレクターとはその部門の実務の責任者である。 

これまでディレクターだったジェフ・ヘデレスキーは副社長に格上げとなり、空いたポジションに”経験の豊か”という触れ込みの新ディレクター、ジム・ダナタリーが入ってきたのである。この、ジム・ダナタリーだが、Newerの同業他社で数年のディレクター経験があり、またマイクロソフトだか、SUNだかでの業務経験があるとかで、Newerのあるカンザス州は大変田舎であるが、こんな田舎で珍しい腕利きとして期待されて採用されたのである。そのため、私の上司はジェフ・ヘデレスキーからジム・ダナタリーに替わったのである。 

そのため、PowerBook1400用2400用のアップグレードカードの問題のいきさつを知らない新上司に対して私が懇切丁寧に説明を行った。しかし状況を全然理解してもらえないのだ。”なんでもっと高く売らないんだ”、”なんで補填なんかしなくてはいけないんだ”という話になってしまったのである。私とすると、これまで多くの時間を浪費したこの問題にさっさと決着をつけて、今度こそ生産的な仕事をしたいと考えていたにもかかわらず、問題をまた蒸し返されてしまったのである。 

で、当初彼がこの状況を理解出来なかった理由はNewerの新参者であるためだと思っていたのだが、時間が経っても初歩的な質問や同じような質問が繰り替えされるので猪川は変だと思い始めた。後で判明することであるが、実は彼はマックの市場についてはもちろん、マックについて何も知らなかったのある。腕利きと期待されて入ってきたディレクターがマックについて何も知らない!これにはさすがに私も驚いた。 

え?NewerでMacじゃなくて、PCを使うの?

彼は会社の自分の机の上にあるメインマシンにPCを選んだ。Newerではその当時会計部門(業務用会計ソフトがPC用のため)以外でPCを使用している者はいなかった。Newerの社員は”マックが好きだから給料は安くてもNewerで働いている”という人ばかりであり、もちろん私もその口であった。しかし彼は優秀なディレクターだったのかも知れないが、マックに興味が無かったのだ。マックに興味がない人がNewerの社員になる、それも私の上司になるなるなんて。どうやってこれから一緒に仕事をしていけば良いのか...将来に暗雲が立ちこめて行くようであった。 

こうしてこれから彼との死闘が始まっていくことになる。 

→ <第八話>邪魔!仕事の妨害をする上司

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