kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第33回 ビジネスのための1冊

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。読者の方からから非常におもしろいタレコミをいただきまして、この「気分はブルー・スカイ」の連載(+dpost.jpの記事)がうまーく編集(?)されて2ちゃんねるにコピペされていたとのことです。しかもこれ投稿時期を見ているとちゃんとマックメムでの初出時に読まれている方みたいで、本当にありがとうございます(笑)。しかもコラムの抽出の仕方など、著者以上に構成がちゃんとしてて読みやすかったり・・・。2ちゃんねる、恐るべし。

さて、以前「がんばれ、ディズニー!」でも触れた、Disney社によるテーマパークビジネス。サービス業に携わる人にはこの会社が行っている「魔法」に興味があるでしょう。なぜあれほどまでにリピーターがつき、愛されているのか・・・その一端を、ある5人のビジネスパーソンを主人公とし非常によくできたストーリー仕立てで紹介する本をご紹介しましょう。その本のタイトルは「ディズニー7つの法則」。タイトルこそ例のヒットした本に似ていますが原題はInside the Magic Kingdom。ここでもトンデモ邦題の法則が:-)(これは日経BP刊ですが)。

この本は先に書いたようにある5人の、バラバラの業種の企業幹部が集まるセミナーが舞台になっています。あまり乗り気ではなかったメンバーが、時が経つにつれてDisneyがテーマパークでかけている魔法がどのようにして生み出されているのかを知るにつれ、彼らの本業へも応用できることに気付いていくというストーリー。この本、もちろんその5人は実在しない人物なのですが、作品中には時の人、現会長マイケル・アイズナー氏やウォルト・ディズニーとも親交の深かったディック・ヌニス氏などの有名人も登場しています。それに登場するエピソードはどれも本物だそうで、アイスクリームを持った少女に、キャストが「飲食が禁止のアトラクションだから、終わるまで持っていてあげるね」と言って、その少女が出てくるタイミングを見計らって新しいアイスクリームを持ってきてあげた、というエピソードはキラリと光るものがありました。ウォルト・ディズニーの歴史、そしてキャラクターなどのエピソードやアトラクションの作成についてを述べた本は多いですが、こういったテーマパークの運営に深く踏み込んだこの本は非常に貴重です。

この本では、そう言ったいろいろなエピソードを元に、ディズニーに受け継がれている「7つの不文律」を紹介しているのですが、この7つの法則自体は著者トム・コネラン氏の創作によるもの。ただ、この本を読んでいると、ディズニーにはちゃんとポリシーがあり、そしてそれが守られている、という、一件当たり前のようで守ることが非常に難しいことがしっかりと伝えられていることが分かります。

たとえば、日本の企業にもポリシーはあります。結構伝統のある大企業ですと壁に社是が大きくかかれていたりするのではないでしょうか。私の前の職場でも新人研修で朝の斉唱がありましたけど(笑)。だけど、その先までは全く教えていないことが多いんじゃないかと思います。私も当時は思いませんでしたけど、今から考えると「私たちは、日々努力します」と言っていたけれど、はて、いったい何を努力するんだろう、と。

なかなかおもしろいと思うのは、ディズニーという会社はこれをちゃんと「具体的に」指南します。悪く言えばマニュアル主義と表現されるかもしれませんが、ディズニーの運営は「こうすればお客様は感動してくれる」ということを明確に教えてくれます。そして、それがキャスト本人にしっかりフィードバックされ、次はもっとよくしよう、といいスパイラルを作り出しているのではないかと思います。そして、根底にあるポリシー、「ゲストに夢を見てもらう」というそれ自体が人間として正しいことであることを皆が理解しているからこそ、この企業が一つの方向に進んでいけるのではないかと思います。トップの意向を一貫して全てのメンバーに伝えるには、それが相応の意義があることが必要です。それがしっかりと回っている企業というのがディズニーのテーマパーク部門なのです。そんなことを感じることが出来た本でした。

おそらく本屋ではビジネスのコーナーにあるとは思いますが、これ、サービス業で何かヒントを得たい人だけではなく、これからウォルト・ディズニー・ワールドに行く人にとってどんなガイドよりも深く深くパークを知ることが出来る良書です。ビジネスに迷った人、そしてこれから「世界一幸せな場所」に行く方にも、おすすめの1冊です。そして、この本の後書きにはこんなことが書かれています。「ディズニー社は、観察していて飽きない組織である。」全くもって同感:-)。

では!
(kyokucho/宮田 健)

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