kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第35回 日本のディズニーは本当に安泰?(その2)

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。前回に引き続き、日本のディズニーを取り上げてみましょう。

日本でディズニーといったら、ほとんどの人が「東京ディズニーランド」を指すと思います。それほどの影響力を持つこのテーマパーク、運営しているのはオリエンタルランド社という、れっきとした日本の企業です。本家ディズニーにとって日本のディズニー・テーマパークは、「ライセンスビジネス」として運営された初めての事例でした。世の中のニュースでは事実上日本で唯一の「勝ち組」テーマパークと呼ばれるこの会社ですが、手放しで安泰かというと、実はそうでもありません。

日本のディズニー・テーマパークはライセンスモデルでの運営となっている、となると、一番気になるのはそのロイヤリティかと思います。この契約がなかなかすごいものとなっていて、当初の契約は「入場料の売り上げから10%、物販の売り上げから5%」となっておりました。この1行でピンと来る人は経営に詳しい人かもしれません。というのも、「利益」からではなく「売り上げ」からのロイヤリティ計算になるため、実はものすごい額の金額を、本国ディズニー社がリスクなしに得ることが出来るのです。しかも、建設費はいっさいディズニー社はタッチしないのですから、オリエンタルランド社としてはたまったものではありません。さらに、この契約は基本は45年間(!)有効と、とんでもなく長期なものとなっていたとのことです(実際は20年でいったん見直しが入るとのことですが、それでも長いですね)。このいきさつについては有馬哲夫氏著の「ディズニーランド物語」が詳しいです。

このような非常に不利と思われた契約でも、オリエンタルランド社は信念を持って事業を進めることで、1983年にオープンしました。この後の成功は皆さんもご存じの通り。すると、ディズニー社が想像もしていない出来事が起きます。それは異常なほどに高いリピーター率と、想像以上の物販の好調。リピーター率は東京から数十分の距離という好条件だったことと、物販の好調はすなわち「ロイヤリティの低い」部分での売り上げになるので、直接オリエンタルランド社の利益になるという点においてこの会社を救いました(最終的に結ばれた契約では、敷地の半分にしかロイヤリティ支払いがかからないようなものになったことも功を奏しました)。つまり、本家ディズニーにとっては「あのときもっと厳しい契約にしておけば・・・」ということになったのです。

しかし、オリエンタルランド社はこのテーマパークだけでは「飽きられたら終わり」であり、とてもリスクが高い状態でした。そこでオリエンタルランド社がとった方法は、「第2テーマパークの建設」と、「オリエンタルランド社独自事業の展開」です。前者はもちろん「東京ディズニーシー」。この建設にあわせ、自らの運営による公式ホテルを建設することにより、舞浜地区を「東京ディズニーリゾート」という一大商業地区を作り出すことに成功しました。

しかし、これらは東京ディズニーランドと同様にライセンスビジネスとなるため、売り上げを上げても上げても膨大なライセンス料を支払わなくてはいけません。そこでオリエンタルランド社は、今まで培ってきたノウハウを使って独自で運営する「イクスピアリ」というショッピングモールを同時にオープンさせました。また、ディズニーとは無関係のキャラクター「ネポス・ナポス」を作りだし、これをモチーフとした新しい子供向けの施設「キャンプ・ネポス」も併設、新たな収入源とするべく展開しています。さらに、オリエンタルランド社は独自キャラクターを創出、管理する会社を設立し、日本郵政公社との提携によるビジネス展開も行っています。

・・・ですが、上記文章の言葉を聞いたことのある人はほとんどいないのが実情で、オリエンタルランド社のビジネスは事実上「ディズニーの契約に縛られた」ものとなっています。となると、彼らに残されているのは「物販の拡大」「テーマパークの拡大」「ディズニー以外のビジネスの成功」という道になるかと思います。ディズニーの日本法人からディズニーストアを買収した背景には、このような事情があったと思われます。彼らにはもう舞浜に残された土地がない状態ですので、新たなテーマパークを作ることはもう出来ません。一見大成功を収めているように見えるオリエンタルランド社も、その裏では未来のビジネスを模索しなくてはならないというせっぱ詰まった状況にあるのかもしれません。個人的には、日本版ディズニーチャンネルは「日本におけるディズニー」を誰よりもよく知る彼らにやってもらいたかったなあ、と思うのですが・・・

では!
(kyokucho/宮田 健)

タイトルとURLをコピーしました