kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第64回 お客様は「神様」です

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

どこでも一緒だとは思いますが、趣味の世界にはイノベータと呼ばれる人たちが存在します。まあ簡単にわかりやすい言葉で言ってしまうと「マニア」なんだと思いますが、その後の販売活動の方向性をある程度決める層。たとえば日本では熱狂的に人気だった「PowerBook 2400c」。Web上をみるといまだにいろんなサイトで活動がみられるんですが、残念ながら経営判断でこのクラスのマシンが消滅。今でこそ12インチのPowerBookが出てはいますが、本国で大成功していると言う印象ではありません。確かに小さなマシンが必要だ!という声も確かにあるのですが、小さくした結果コストがかさみ、売れなければ意味がないのでしょう。この辺のファンの声をどのように受け止めるのか、ネットが発達した今、マーケティング担当の人はなかなか判断が難しい時代になったのではないかと思います。

そんな前振りなのですが、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、公式ファンクラブ「ファンダフル・ディズニー」をスタートさせるという発表がありました。年会費3150円で、会報の送付、特製カレンダーやファンクラブ限定パーティなどのサービスが受けられるとのことです。このような試みは日本では初めてなので、ほとんどが東京ディズニーリゾートをメインにしている日本のディズニーファンサイトが一斉にこれを取り上げ、傍目からみても盛り上がっていることがわかりました。なかなかこのコミュニティは一斉に同じ事を取り上げることがないものでびっくりでした。

で、これに対する反応をファンサイト、掲示板含めいろいろと眺めていましたが、ここでもマニアの悲しいサガが出てきていてある意味おもしろかったです。年会費を払わせるのだから、サービスはかくあるべきだ!というような内容。実際のところ公式サイトを見て頂くとわかるのですが、3150円でカレンダーはもらえるし会報も届く、家族友人まで使える割引も含まれているわけで、客観的にみると「値段相応」のサービスなんじゃないかと思います。しかし、やっぱりマニアはどんなサービスが来ても満足しないもの。「カウントダウンイベントを優先的に購入可能にすべき!」とか、「会員限定の貸し切り日を!」など、妄想だけが広がってしまうのはある意味仕方がないことなのでしょう。ただ、それが行き過ぎると、「会費を払っているのにこんなのじゃ意味がない」という考え方になってしまいがちです。

個人的な見解ですが、これはやはり「お客様は神様です」という間違った認識が影響しているんじゃないかと思います。サービスに対してお金を払っているのだから、最大限に優遇して欲しい、という考え方は間違ってはいないものの、「受けられるサービスはその対価に相当する」という点が抜けてしまうと、単なるクレーマーになってしまう可能性があります。海外ではチップという形でサービスの対価が目に見えるのですが、日本ではやっぱりなじみがなく、サービスは無料と思われがちです。

ちょっと調べてみたら、その言葉で有名な三波春夫さんも「お客様への徹底したサービス精神」としてその言葉を発したわけではないと後に語っていたそうです(元は、舞台の上では、神様の前で拍手を打ちような心境であることからだそうです)。オリエンタルランド社が東京ディズニーランドを作る時に、本社の幹部も日本における「お客様は神様です」という言葉に対して、「お客様こそ1番人間くさい人間じゃないか」ということを言っていたそうで、曰く「お客様はもっとも素人らしい素人なのだから、我々プロがリードしていく必要があるんだ」と。プロがサービスを提供し、そのとおりにしていったら絶対にハッピーになると言う自信があるわけです。客の言うとおりのことだけをするというのは、彼らにとっては十分なサービスではないのです。

ディズニーも夢を相手に商売しているような印象があるのですが、慈善事業じゃなくて立派な企業。そういう意味で、リーズナブルな値段でそれ相応のサービスを提供するファンクラブの設立は非常にいいところに目をつけていると思います。リピーターが9割を越える今、そのリピーターを手放さないことが重要ですから。このファンクラブについて「会費を払っているんだからもっと優遇して!」という声が多かったら、もし私ならばもっと高いグレードを設定してしまいますね。どんなアトラクションでも優先乗車で行列知らず、あなたのためだけにキャストが働きます、ただし会費は約5千万円/日。名付けて「マイケル・ジャクソンクラス」。それならさすがに誰も文句は出ないでしょう。会員もいないと思いますが(笑)。

では!
(kyokucho/宮田 健)

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