
こんにちは、遠藤です。

秋になると自宅から見える山々は赤や黄色に染まります。なかでも、カエデの紅葉は大変すばらしい色調を帯び、私は、毎年楽しみにしています。
この時期、「植物の勉強をしています」と言うと「モミジとカエデはどこが違いますか?」とよく聞かれます。
なかなかその場で、手短に説明するのは難しく、「同じであるとも言えますし、違うとも言えます」などと、要を得ない答えでお茶を濁してしまうこともあります。
答えるのが難しい理由は「もみじ」も「かえで」もどちらも植物名ではないからです。
実は、カエデは、「ソメイヨシノ」のようなある植物を指す名前ではなく、「サクラ」のようなグループを指す言葉なのです。
カエデの仲間は日本では26種があり、なかでも紅葉が美しいオオモミジや、黄色に色づくイタヤカエデは名前をご存じないかたでも、一度は見たことがあると思います。
一方モミジというのは、植物名でも、「カエデ」のような植物のグループの名前でもありません。
モミジを漢字で書くと「紅葉(モミジ)」となるように、紅葉、黄葉するすべての植物や、紅葉、黄葉の現象をさしている言葉なのです。
「もみじ狩り」という言葉があって、「かえで狩り」という言葉がない理由は、26種あるカエデばかりを選んで拾うのではなく、黄色に色づくクヌギや、ブナ、きれいな赤となるニシキギも、拾って「もみじ」を楽しむからではないかとおもいます。
古今集に収録され、百人一首で有名な猿丸太夫(さるまるだゆう)の歌
「奥山に もみじ踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき」
のもみじも、カエデのたくさん生えている山で、と言う意味ではなく、赤や、黄色に色づいた落ち葉のつもった山の風景を思い浮かべるとよりいっそう趣も深くなります。
モミジとなる植物の代表であるカエデがあまりにもすてきに色づくので、いつしかモミジとカエデは同じものを指すようになってしまっているようです。