kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第29回 感動を売る会社

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

テーマパーク西の雄、ユニバーサルスタジオ・ジャパンに待望の新アトラクション「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド」がオープンし、連日メディアにとりあげられる・・・と思いきや、あまりでてきませんねえ。これ、フロリダのユニバーサルスタジオリゾートにあるアトラクションを輸入したものなのですが、世界最高のライド型アトラクションであることを断言できるほど、衝撃的なものでした。絶叫型のアトラクションが苦手な人でも、それが得意な人と同じような体験ができる?不思議なものですので、近くに住んでいる方は是非体験しましょう!

さて、そのUSJ、新アトラクションのニュースに加え、「USJ、業績不振で60億返済できず」という報道も流れてきました。確かに以前より期限切れ食材や火薬量の問題など、運営体制が問われる事件が多かったものの、ここまで深刻な問題であるとは思っていませんでした。日本で勝ち組といわれているたった2つのテーマパークの一つであるにも関わらずです。

で、ここで興味深いのが、入場者数が落ち込んだときにUSJがとったテコ入れの策。USJは昨年秋に、2回分弱の入場料を払うと、ある一定の期間何度も入場が可能な激安パスポート「ハリウッド・フレンド・パス」を発売しました。ところが、「入場者数は増えたものの、パーク内での売り上げ(客単価)はむしろ低下した」と、とても皮肉な結果になってしまいました。

さて、ここからは東京ディズニーリゾートのお話。東の雄はどのような戦略を持っているかというと非常にクリアで「お客様には平等にサービスを行う」。つまり、正規の時間帯で正規の料金で入れるチケットは絶対に割り引きしません(福利厚生の制度はありますがこれはまた別として)。日本では、客へのサービスは「いろいろなおまけをつけたり割引サービスをする」という考え方が根強いような気がしますが、ディズニーはこれをやらないのです。なぜなら、彼らは「割引をするということは、正規の値段で買った人たちへのサービスにならない」つまり「安売りとは、自分で自分の商品価値を引き下げている」と考えているからなのです。

以前、東京ディズニーランドの取締役の方が開園まもない頃に行った講演で「自分たちの仕事は、いわば「感動を売っている商売だ」と言い切ることができる」と言っていました。これはあのテーマパークのビジネスを、言葉は悪いかもしれませんが端的に表している一言じゃないかと思っています。さて、その感動を、「あー、これすごく感動したんですけどもうちょっとまけてくれません?」なんてことを言う人がいますでしょうか?いたとしたら、それは本当は感動していないんじゃないかと思います。つまり、感動を値切る人なんていない。今の世の中はデフレと言いつつも、消費者はいいものにはちゃんとお金を払っているんじゃないかと思います。USJは自分のコンテンツに自信を持ってもいいはずなのに、それを自らおとしめてしまった、それが今回の業績に反映されてしまったのではないかと思います。

これはテーマパーク業だけの話ではないと思います。先日、初めて銀座のアップルストアで商品を買ってみました。近くには値引きやポイント還元などを行っているお店もあるのですが、丁寧な接客にきれいなレイアウトなど、そこでしか味わえない体験を含めて堪能させていただきました。リピーターになろう、というのは値段ではなくそういう部分が重要なのでしょうね。値段だけだったら、もっと安い店がでてきた瞬間に見向きもされなくなってしまいますから。USJが先のハリウッド・フレンド・パスを発売すると聞いたとき、東京ディズニーリゾートが追従してしまったらおしまいだな、と思っていましたが、彼らのポリシーは開園当初から変わっていないことを見て安心しました。単なる安売りを是とせず、それができる余裕があるならクオリティを上げろ、それこそが本当の「サービス」だ、というポリシーはなかなか実行できないものですからね。私が知る限り値段よりも「体験」を重視している店はもう一つくらいしかありません。どこかって?今あなたが見ている「ここ」ですよ。:-)

では!
(kyokucho/宮田 健)

タイトルとURLをコピーしました