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<第四話>極秘!新規代理店の誕生

3000本以上の在庫が山積み

 さて、前回PowerBook1400と2400用のアップグレードカードが大量に売れ残ることとなったところまでの話しを書いた。今回はその続きである。

 PowerBook1400と2400用のアップグレードカード3000本以上もの在庫の前に社長の顔がみるみる青くなった。すぐに処分しろという指示が出たのは言うまでもない。

販売促進のために営業に”にんじん”をぶら下げる

 こういう時に日本の会社なら社員の尻をたたき、販売店に泣きついてでも売ってこいと指示をするものだが、Newerはまず販売店に”にんじん”をぶら下げたのだ。つまり、PowerBook1400と2400用のアップグレードカードを販売してくれたら、いくらいくらを販売店にキックバックするというプロモーションを行ったのだ。しかしプロモーションの甲斐もなく在庫はほとんど減らなかった。

 次にNewerは販売部門の社員に”にんじん”をぶら下げた。特定数量を販売するとボーナスを出すというものだ。で、もちろん猪川もこのにんじんにつられて日本の販売店に売り込みをしてみたが、私のプッシュぐらいで押し込める在庫というのは数十本から、せいぜい100本程度。3000本の在庫に比べれば焼け石に水であった。

 しかし、PowerBook2400用のアップグレードカードの販売先というのは紛れもなく日本市場であった。つまり2400用のアップグレードカードの在庫を処分するには日本の代理店に購入してもらうほかには無いのである。となると、その交渉は私がするしかなく、私への期待が日に日に高まっていった。しかし1週間経ち、2週間経ち、なかなか日本の代理店が購入してくれないとなると、その期待がだんだんプレッシャーに変わっていったのである。穏やかな雰囲気のNewerにあってもこの時ばかりは私も焦りを感じた。

 そのため連日Newerも私もいろいろな策を練った。Newerグッズをおまけにつけるとか、PowerBook 2400用のドッキングステーションを無料でバンドルして見た。しかしそんな小細工ではどうしようもないぐらいに市場が冷めていたのであった。

打開策として、新代理店を模索

 解決策を見つけられない状況で年越しとなり、99年のMacworld Expoサンフランシスコが始まった。そして解決策を求め、極秘に日本のアップルの大手代理店の加賀電子との打ち合わせ持ったのである。

 この時Newerは商社丸紅とアークポイントと日本市場の独占契約を結んでいた。つまりこの2社のみが日本でNewerの製品を正規に販売することが出来たのである。しかし、このころNewerはアップグレードメーカーとして質、量ともに業界トップであり、加賀電子もNewerの製品を取り扱いたいと考えていたのである。しかし、独占契約があるために加賀電子ではNewerの製品は取り扱いたくても取り扱えなかったのだ。

 一方Newerは既存の代理店2社の販売数量に限界を感じており、もっと販売数を増やしたいという思いがあった。特にPowerBook 2400用のアップグレードカードという日本向けの在庫を大量に抱えているこのようなピンチの時にそれを処分してくれる相手が欲しかったのだ。しかし独占契約のためにこれ以上代理店を増やすことが出来ない。そこで苦肉の策として既存の代理店アークポイントを通して、代理店加賀電子に製品を購入・販売してもらおうと考えたのである。

Newerの老舗代理店A社とのつながり

 この代理店アークポイントは業界では知る人ぞしるバイリンガルの平賀安利氏が経営する会社で、社員が10名前後という小さい会社ながらマーケティングに関してはずば抜けた才能があり、マック系の雑誌にセンスが良いNewerの宣伝を毎月掲載していた。その費用は月に100万円以上であったはずである。日本を代表する大手商社丸紅でさえ、そんな広告費はかけていなかった。平賀氏はNewerがまだ小さい頃からNewer製品の実力を見抜き、それだけのマーケティング費用をかけて日本でのNewerブランドを作り上げてきたのだ。平賀氏は大のマックユーザーであるゆえ、マックユーザーの心理をよく理解しており、Newerの商品の売り方を心得ていた。

 ただ、平賀氏が経営する代理店アークポイント社は2つの短所があった。1つは会社の規模が小さいだけに、購買能力が低いことだった。このころにNewerはアークポイント社に対してこれまで実績や、マーケティング能力を買っているものの、一方でNewerは少しでもキャッシュフローが必要な時期であったため、代理店アークポイント社の販売能力に満足していなかったのだ。 代理店アークポイント社の2つ目の短所は、アークポイント社が独自の流通チャネルを持っていないことであった。Newerの製品を購入しても流通チャネルがないので、特定の販売店にだけ卸すことは出来ても、全国的に製品を流通させることができないのである。ただ、アークポイント社からすればNewerから製品の納期や数量が守られない限り、Newerの製品を正規の流通チャネルなんかに載せられないというのが言い分であった。もし正規の流通チャネルを通して製品を販売しておきながら納期や数量が約束できなければ、アークポイント社がクレームを受けることとなり、流通チャネルでの信用を失い、結果アークポイント社もNewerも日本の市場で商売が出来なく可能性があるわけである。アークポイント社が慎重になるのは無理の無い話であった。

代理店アークポイント社と加賀電子で手を組んでほしい...

 そこでNewerは代理店アークポイント社と代理店加賀電子に手を組んでもらうことでこの短所を解決してもらおうと考えたのだ。代理店加賀電子はアップルの大手の代理店であるため購買能力と支払い能力に関しては全く問題はなかった。また加賀電子は独自の販売チャネルを持っていた。アップルの正規の代理店であるから、マックを購入が出来るところならどこでもNewerの製品が購入出来るという夢のようは販売体制が実現する可能性があったのだ。そして、これまで実績のある代理店アークポイント社が引き続きマーケティングやサポートを担当してくれれば鬼に金棒となるはずであった。 

 そこで、サンフランシスコでMacworld Expoの初日が終わった6時から夜通し、加賀電子の部長、課長、担当者、アークポイント社の平賀氏、Newerの販売部長のジェフ・ヘデレスキーと私でミーティングを行ったのであった。その甲斐あってミーティングの最後には、アークポイント社と加賀電子とNewerでの代理店契約にほぼ合意することが出来たのである。

 そして、取引が開始されたら、まず大量に抱えたPowerBook1400と2400用のアップグレードカードの購入を御願いしたのである。代理店加賀電子の担当の方から”任せてください!”という力強い返事をもらって販売部長のジェフも猪川もほっとしたのを覚えている。 しかしこの一見ハッピーな契約が、後の在庫の処理をとんでもない展開に向かわせることになるのだった。

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