kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第17回 ミッキーが泣かない理由

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。まもなく結婚パーティを開く友人より、司会とスピーチとBGM選曲を頼まれてしまいました。どちらかというとせっかく買ったFinalCut Expressでビデオでも作ってあげたかったんですが・・・ということでiPodに貯め込んだライブラリから曲を集めて何度も聞いてイメージを固めているところです。以前もちょっとまとめたことがあるのですが、ディズニー系の曲はBGMには最適なんですよね。

さて、その中でもレストランウェディングのBGMに使えるCDとしてあげている「ミッキーは泣かない」というタイトルの作品があるのですが、こちらのアルバムについて、マックメムのジェネラルマネージャー、しらいしさんから面白いお話を聞きました。このアルバムの制作者であるcoba氏のライブでのトークで、「このアルバム、本当は『ミッキーが泣いた』というタイトルにしたかったんですが、ディズニー側が『ミッキーは泣かない、絶対に泣かないんだ』というように頑として首を縦に振らなかったため、こういうタイトルになりました」ということをお話されていたそうなのです。正直これを聞いたときにはいかにもディズニーがいいそうなお話しだなあ、と感じてしまいました。ディズニーがこのようにブランドイメージを大事にするのはいろいろな「事件」(真偽はともかく)等で皆さまもご存知かと思います。ディズニーは自分のもつキャラクター等のコントロールを厳しく管理しており、先に行われた著作権の有効期間を延長する、通称「ミッキーマウス保護法案」の騒動でも端的に表れていますが、第3者がそれを侵害することを許さないことでも有名です。何故ディズニーはこのように厳しく、ある意味病的にブランドイメージを重要視しているのでしょうか。

これには、2つの理由があると考えています。1つはディズニーのビジネス手法。ディズニーのビジネスは映画、テレビ、テーマパーク事業、マーチャンタイズ事業と幅広く行われていますが、これらの流れを考えるとまず最初にありきは「映画」、すなわちキャラクターを確立するストーリーがスタート地点であることがわかるかと思います。この映画なくしては、それをもとにしたマーチャンタイズ事業、映画をテーマにしたアトラクション、ましてやサイドストーリーをテレビで放映しても意味がありません。ディズニーの屋台骨はあくまで「映画」なのです(それだけに最近の低迷がこれから暗い影をこの会社に落とすことを間違いなく意味していて怖いのですが)。
そのため、今後のビジネスを円滑にするためにも、映画から作られたキャラクターたちを強力に保護していかなければ、会社が存続できないということになります。

もう1つは、ウォルト・ディズニーがミッキーマウス創造以前に受けた体験が重要な鍵となっています。ウォルト・ディズニーが最初にヒットさせた「幸せウサギのオズワルド」という作品がありました。ウォルトはこのヒットをもとに、制作者側に1作品ごとの報酬をあげてくれという要請を行ったところ、逆に製作費の削減を言い渡され、それを守れないのならば制作スタッフごと引き抜く、と通告、結果キャラクター、スタッフ、そしてすべての権利を奪われ、ウォルトの元には何も残らなかったという事件がありました。失意のウォルトは、このときに「すべてを自分でコントロールできるようにならなければならない」と考えたといいます。そしてその失意の中、帰りの汽車の中で創造したキャラクターこそ、あのミッキーマウスだったりするから歴史というのは面白いものです。

ディズニーがこのように権利に対しナーバスになっているのはその他にも多数の紛争があり有名なところなのですが、先のcoba氏の事例に関しては、個人的にこうであって欲しいということがあります。ミッキーは絶対に泣かない、とディズニー社はいいますが、過去にミッキーが泣いたポートレートがあることをファンは知っているのです。それは、ウォルト・ディズニーが亡くなったときのタイム誌の表紙。ディズニースタッフがこのことを覚えていて、なおかつ「ミッキーは泣かないんだ」と言ったのならば、ディズニーにとっての「ミッキーの涙」は想像以上に重いのでしょう。

では!
(kyokucho/宮田 健)

タイトルとURLをコピーしました