kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第56回 パークはみんなのために

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

今回のスタートは私とMacの関係から。私は以前アップル社が作った学生グループに入っていました(余談ですが、mixi内に同窓会を作ってます。マックメムさんを見ている元メンバーがいましたら是非参加を)。そのときMacに関して感じたPCとの違いの1つが、障碍者に対する距離。当時はまだWindows95もなく、コマンドラインに近い対話インターフェースがPCのイメージでした。ちょうどその学生グループを運営していた会社がMac向けの様々な障碍者向け支援ソフトなどを取り扱っていたこともあり、そのときに見せてもらったApple社制作のビデオ「Chapter 1」が忘れられません。

このビデオは有名な「ナレッジ・ナビゲータ」と同じ頃に作られたもので、テクノロジーがどのようにして生活に入り込むか、というプレゼンテーションビデオでした。たとえば聴覚を失った人が眼鏡型のMacintoshにより、聞こえる言葉を字幕として表示することで、通常の人と同じ能力を取り戻せるだけではなく、聞こえてきた言葉がたとえ外国語であったとしても、それを自動翻訳することで理解できるというデモを行っておりました。つまり、テクノロジーは障碍を克服するだけではなく、さらに能力を高めることができる、ということでした。そのテクノロジーの紹介もさることながら、実生活に違和感なくとけこんでいるのが印象的なプレゼンテーションでした。

さて、話は急にディズニーに戻って。アメリカ本国のディズニー・テーマパークに行きますと、あまりの「車いす」利用者の多さにびっくりするかと思います。乳母車と同じくらいの規模で電動車いすがレンタルされていますし、車いすのゲストが利用できるアトラクションの数も想像以上。よくよく観察していると全く歩けない方ばかりという訳でもないので、車いすを利用することに対する障壁が非常に低い=車いすを利用しても困ることがない、という作りになっていることにとても驚きました。これ自体はディズニー・テーマパークに限らず、公共の場所では専用の駐車スペースが必ず用意されているなど、アメリカという街自体がそのように作られていることに気がついたときはもっと驚きましたが。

特にディズニー・テーマパークの中ですと、時にびっくりするような光景に出会うことがあります。フロリダのマジック・キングダムに初めて行ったときに小さめのショーを見たのですが、生演奏のバンドの横に、かなり小さなステージ(というより単なるお立ち台)があり、そこにふつうのキャストコスチュームを着た初老の男女キャストが立ち上がり、派手なのか地味なのかがわからないダンスをしていたのです。ちょうど日本で一時期はやったパラパラみたいなものか?と思いましたが、後にそのダンスは耳の不自由な方に対する、手話でのパフォーマンスとわかったときには本当に驚きました。彼らは単に手話通訳を行っているのではなく、あくまでショーの一部のように振る舞っていたのですから。このあたりの違和感のなさは、今もディズニーのテーマパーク業がトップを独走しているという根拠の1つなのではないでしょうか。

そして、その試みがやっと日本でも実現します。東京ディズニーシーにて行われている、港全体を使っての大規模なショー、「ポルト・パラディーゾ・ウォーターカーニバル」でもこの手話パフォーマーが登場するとの発表があったようです。元々このショーはかなりセリフの多いものだったので、見ているだけでももちろん楽しいんですが、じっくりとストーリーを追った方がもっと楽しめるので、手話パフォーマーが登場したのは耳の不自由な方にはもちろん、一人でも多くの方に楽しんでもらいたいと思うパークのファンにとってもうれしいことではないかと思います。

振り返ってみると、ウォルト・ディズニーのエンターテイメントに関する考え方は、アップルの「for the rest of us」に非常によく似たものがあるんじゃないかと思います。アップルの場合はテクノロジーですが、ウォルト・ディズニーにとっては、誰もが同じだけエンターテイメントを享受できること。パークから帰る人たちすべてにハッピーになってもらうこと。そもそもウォルトがテーマパークと呼ばれる場所を作り出したのも、それまでの遊園地が大人にとっては退屈だったため、家族みんなで楽しめる場所を作りたい、ということからスタートしていますから、誰もが平等に楽しめる場所としての第一歩としては評価できると思います。

今のところ、東京ディズニーシーでの手話パフォーマーによる「もう一つのショー」は期間が限定されており、毎日行われるという訳ではないようですが、是非、この機会にこのショーを体験して、楽しい1日を過ごして欲しいと思います。もちろん、近くに耳の不自由な方がいたのに気づいたら、ちゃんと席を譲ってあげてくださいね。

では!

(kyokucho/宮田 健)

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