《今だから明かせる秘密》PowerBook 2400cとNUpowr G3 for 2400の開発秘話 第6話

PowerBook 2400とNUpower G3

NUpowr G3の受け入れ準備

日本IBMにNUpowr G3 for 2400を4月に3000本発注し、待つこと4ヶ月。Newerに製品が納品される8月になってNewer内も慌ただしくなってきました。

まずはセールス部門。ここは国内はもとより、世界中の代理店から予約を受けることになります。ただ、PowerBook 2400用のG3カードはほぼ日本ユーザーのための製品だったということもあり、日本の代理店からの予約を受け付けます。

それからマーケティング部門はマニュアルをつくり、化粧箱のデザインを行い製品を入れる包材を用意します。

また同時にプロトタイプを代理店やテクニカルライターや有名ブロガーに貸し出して、レビュー記事を書いてもらいます。

エンジニア部門は、NUpowrに付属する機能拡張やコントロールパネルを準備しておきます。最終バージョンを業者に渡して、製品+予備の数量分をフロッピーディスクに焼いてもらいます。

Newerが前もってこのように色々なことを並行して準備できるなんて奇跡的でした。なぜこのように準備ができたかというと社長が激を飛ばしていたためです。

というのも、NUpowrの納品時に日本IBMに対して製造代金を支払う契約になっているため、納品後すぐに販売して、1日でも早く現金化しないとキャッシュフローが持たないためです。ですので、社長が各部門の進捗を確認し、決して遅れることがないように指示をしていました。
 

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日本の予約状況

今回PB2400c用のG3カードは3,000本製造することになったのですが、この数量は春先に代理店からざっくりした購入希望の数量をもとに見積もったものでした。

発売1ヶ月前の7月に入り、プロトタイプを代理店をはじめ、月刊誌のMac PowerやMac Life、PBユーザーのファンサイトのPowerBook ARMYの飯島氏や極私的PB2400c頁の水谷氏に送り、レビュー記事を書いてもらいました。そしてそれらのレビュー記事が高評価であったために、ショップに予約が殺到する事態となりました。

代理店の予想を遥かに超えた予約数は、製造分の3,000を大きく上回ってしまいました。こうなるとその3,000本を代理店2社が取り合うような格好になり、どのように分配するかが問題となりました。

基本的にはNewerの早く予約した代理店の数量が優先されるのですが、今回は最初で最後の発注の可能性があったため、不公平のないように均等に分配することになりました。
 

ついにNUpowr G3 for 2400が入荷

そして8月のある日、ついにNUpowrがNewerに到着しました。

梱包前の製品を見せてもらいましたが、大変美しく仕上がっていました。品質に関しては全く心配のいらない日本IBM製です。当然、日本IBMでも動作テストは行われていますし、Newerでもテストをして全く問題ありませんでした。

製造部門の梱包部隊が、化粧箱にNUpowr G3とマニュアルやフロッピーディスクなどを入れ、箱をしめてシュリンクラップして行きます。梱包部隊を増員して、1日に1000個ペースで出荷出来る状態にしていきます。

そしてシッピング部門は出来た製品を20〜50個程度のダンボールに詰め、どんどん出荷していきます。

NUpowr G3 for 2400は3,000本製造され、米国向けに出荷された200本を除いた全量2,800本を日本に送るのに約3日ほどかかりましたが、全て出荷することが出来ました。
 

NUpower G3の利益は約3億円

PowerBook用のアップグレードカードはデスクトップ用に比べて小さい分だけ製造コストがかかり、その分定価が高くなります。定価が高いということは販売上不利なように思われますが、売れる製品であれば利益が大きくなるというメリットがあります。

このNUpowr G3 for 2400は1本あたり3万円から4万円の利益を得ていたので、発売からわずか数日で1億円前後の利益を得ることができました。パーツ代金やIBMに支払った製造代金もすぐに回収する事が出来き、キャッシュフローも全く滞ることはありませんでした。

実は日本IBMに同時に発注していたNUpowr G3 for 1400、5,000本は世界各国で販売されたのですが、これも販売から数日で完売となりました。こちらの利益は2億円前後あったように思います。

日本IBMとの仕事によってトータルで3億円の利益を得ることが出来てNewerは万々歳でした。

日本IBMのPowerBook 2400c開発チームはアップルからの受注が終了した段階で解散される予定だったそうなのですが、Newerからの受注によって利益を得ることが出来きたため、1年程度解散を引き伸ばすことが出来たと、日本IBMの開発責任者の方が後日教えてくれました。

また、PowerBook 2400cを開発して蓄積したノウハウをアップル社以外に使用して、自分の会社に利益をもたらすことが出来て良かったと語っていました。

しかしこの喜びが、数ヶ月の悲劇の前触れだったことはこの時、Newerの誰も知るよしもありませんでした。

第7話に続きます。


 
 
 

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