働くことが難しい時代
「“勤務ではない研究” 大学教員の働き方を考える」というNHK NEWSの記事を読みました。
これを読んで、プロジェクトXに取り上げられている人たちが何日も会社に泊まり込みで働いて、プロジェクトを達成するというようなことは、現代ではありえないという若者の意見について話を書いたことを思い出しました。
現代では、働くということが簡単でなくなっているなと感じています。
大学教員の働き方と労働基準法
記事の内容を簡単に要約すると”大学教員の研究は仕事なのか否か”ということです。
一部抜粋すると以下のようなことが書かれています。
「私も含めて、大多数の教員は土曜日とか日曜日とか出ることが多かったです。だいたい20年前からやっていました。大学に出てきていても『自主的な研さん』であれば休日出勤には該当しない。大学も教員もそういう意識でした」
「研究は仕事ですが、一方では趣味であり生きがいです。やらされているのではなく好きでやっているのです」
研究者は「労働者・雇用者であるという認識は薄く、大学というデパートに入居するテナントの責任者というような意識で働いている」
ところが、こうした働き方が問題視され、島根大学は、去年8月、松江労働基準監督署から深夜・休日の賃金未払いがあったのは労働基準法に違反するとして是正勧告を受けたということです。
ただ、これは島根大学だけの問題で終わらず、公立・私立・東京・地方の大学全てが対象になってくるのだろうなと予想が出来ます。
あれ?研究職は裁量労働制ではないの?
この記事を読んで疑問がわきました。研究職は裁量労働制ではないの?
裁量労働制(さいりょうろうどうせい)とは、労働者が雇用者と結ぶ労働形態のひとつである。労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種において適用され、あらかじめ労使間で定めた時間分を労働時間とみなして賃金を払う形態である。労働者にとっては仕事の進め方を自分でコントロールしやすくなるというメリットがある。by wikipedia
調べてみると、裁量労働制の職種の一覧が厚労省のHPにありました。
アーティスト、ディレクター、コンサルタント、会計士、弁護士、そして研究者!研究者もはいっているじゃないの!
それなのに、労働基準法違反?なぜなぜ?
裁量労働制の契約内容により違法の可能性
さらに調べてみると、大学と大学の教員がどのような労働条件で契約したかによって裁量労働制であっても、違法となるかどうかが決まるようです。
休日の作業を最初から見込んで契約していれば問題はないのですが、契約に盛り込まれていなければ、それは裁量外として雇用者が賃金を支払う義務が発生するようです。
また、深夜の作業は明確に裁量労働外ということで、雇用者は支払いの義務があるようです。
ただ大学の給与には予算があるでしょうから、予算を超える休日出勤や深夜残業が出来ない(または制限される)ことが予想され、研究者が研究機会を失ってしまう可能性があることが懸念されます。
大学教員の研究は労働なのか?
ただちょっと解せないのは、研究というのは労働なのか?という点です。
大学の収益のメカニズムは、大学が教員を雇い、教員が授業を行うことで学生から授業料を徴収して利益を上げるというものです。よって、教員が行う学生への教育目的の作業(学生の論文の添削や発表会の練習立ち会い等)は労働であるといえます。
一方で、教員の研究というのは大学の収益システムとは別の作業であり、研究から大学は収益を得ることはできません(企業との共同研究を除く)。よって教員の研究は労働に当たらず、深夜だろうが休日だろうが好きな時に行って良いのではないのでしょうか?
まとめ
今回の記事は全体的に教員の出勤を管理することで、大学も労基も教員の働きすぎによる過労に気をつけてもらおうという意図を感じました。健康を害してまで研究をすることはないですが、日本の将来のためにも、研究をしたいときに出来る環境というのも大切なのだと思うのですが。
つくづく働くことが難しい世の中になったなと思う今日このごろです。
これと同じような案件では、中学・高校の部活の顧問問題があります。日曜日の対外試合のために生徒に付き添わないといけないという理由で駆り出される先生がいます。こちらは学生の教育目的ですから労働扱いで手当がでるようですが、雀の涙ほどで割に合わないと高校の教師をしている友人は述べておりました。