映画”ジャックと豆の木”
自分が小学生だった時の冬休みの話。
朝の子供番組で映画”ジャックと豆の木”の紹介をしていて、なぜかすぐに観たいという衝動にかられました。
「映画に絶対に行きたい!行きたい!行きたい!」自分は母親に強くせがんだのでした。
その当時、弟が生まれたばかりで母親としては小さなな子供をつれて外にはでたくなかったのでしょう。しかし、子供のわがままというのは怖いもので、そんな母親の気持ちをよそに駄々をこねまくったのです。
かわいい息子がそこまで懇願するならしょうがないと思ったのでしょう。その日の午後に映画に連れて行ってくれることになりました。
大井町の映画館
その当時まだ存在していた地元大井町駅前の映画館。
弟が乳母車で寝ているため、母は入館したものの劇場内には入りませんでした。
母は廊下にあるベンチに座り、ここで待っているから自分ひとりで見てきなさいと促しました。
映画館は古びていて、廊下は薄暗く、壁はたばこのやにで黄色くなっていたように記憶しています。
自分だけ、がらがらの館内の空いている席に座り映画を観始めました。
母がいない
映画を観ている途中で母のことが気になり、劇場の外に出てみると母の姿がありません。
小学生の自分は軽いパニックになって半泣きになっていると、劇場のもぎりのおばさんが
「お母さんは今買い物に行っていてすぐに戻るって言ってたわよ。お母さんが帰ってくるまで映画を観てなさいな。」と声をかけてくれました。
しかし自分は映画どころではなく、劇場の入り口で母が帰ってくるのをずっと待っていたのでした。
母が買い物から戻る
母はしばらくして映画館に戻って来ました。母は駅前の阪急デパートで夕飯の惣菜を購入していたのでした。
たぶん時間にして30分ほどだったと思うのですが、その時間がすごく長く感じられました。
自分は映画を十分観たからもう家に帰ろうと母をせかし、映画館を後にしたのでした。
* * *
その帰り道でタイミングの悪いことに夕立に降られたのです。傘の用意がなかった母と自分は冬の冷たい雨に濡れながら家に戻りました。
その夜、自分は熱を出し、さらに母に迷惑をかけたのでした。