価格決定のメカニズム
製品の価格を決めるのは決して簡単なことではありません。
価格が高すぎると販売数量が減り売上が減ります。逆に価格が安すぎると販売量は増えますが売上が上がりません。
つまり、価格x販売数(つまり需要曲線内の面積)を最大にする価格づけが必要ということになります。この図では緑の枠線が最適値になります。
そこで緑の枠内で製品を販売することで、最大限の売上を得ることが出来るのですが、緑の枠からはみ出ている部分は潜在的なお客様がいる部分であり、販売チャンスを逃していることになります。
高くても買いたいお客様を逃さない
例えば緑枠の上の赤い部分。ここには”価格は高くても製品を購入したい”と考えているお客様がいるエリアです。しかし、実際にはこれらのお客様に対して、安い価格で製品を提供してしまった結果、機会損失になっています。
そこで、最近では定価で販売する製品に加え、特別版を販売するようになりました。DVDであれば、特別映像が入ったディスクがついてくるものや、ジャケットが変更になっている初回限定版がそれです。(ほぼ)同じ製品を2つの価格設定にすることで、これまで逃していた赤い部分を得ることに成功しています。
安ければ買っても良いお客様を逃さない
そして、逆に緑の枠からはみ出ている青い部分ですが、これは価格が高いので購入したいけれども、購入を控えてしまったお客様がいるエリアです。これは販売から数ヶ月、1年ほど経過してから廉価版を販売することで、定価では逃していたお客様を得ることが出来ます。ゲームのベスト版と言われるものや、本で言えば文庫本がこれにあたります。
実は潜在的な需要がまだまだある
こんな感じで今までは製品の構成や価格は決まっていました。
しかし、この需要曲線の内部は隙間だらけで潜在的なお客様がまだまだ眠っているわけです。しかし既存の定価システムではどうしても隙間にいるお客様にリーチできなかったのです。
ネット時代の大発明!アプリ内課金
この隙間を埋める発明が、ソーシャルゲームなどで有名なアプリ内課金システムです。
これまで製品は販売する側が価格を設定していましたが、アプリ内課金システムでは販売する側が価格を設定しません。プレーヤーが価格を設定するのです。
この発想の逆転が需要曲線の内側の総取りを可能にしました。
以下にその仕組みを説明します。
アプリ内課金による最大売上の仕組み
エントリーユーザーからちょっとだけ課金してもらう
まずはゲームに全く興味がない、興味があってもゲームに1円も払いたくない層がいます。この層を単純に切り捨てるのではなく、将来のお客様と考えて、まずは無料でプレーさせてあげることで圧倒的なエントリーユーザーを確保します。
ただ、圧倒的なエントリーユーザーの何%かは、無料プレーをしているうちにゲームを気に入ってくれて、何かアイテムを購入したいとか、次のステージに行きたいと思うようになります。そのユーザーにはほんのちょっとだけ(例えば100円)課金してもらいます。
そうやって、彼らは初級ユーザーとなっていきます。
初級ユーザー、中級ユーザーへとステップアップ
そのうち、初級ユーザーの何%かは、だんだんとプレー時間が増え、結果アイテム数を増やしたくなります。そのユーザーにはさらに(例えば1,000円)課金してもらいます。そして中級ユーザーに変化していきます。
同様に中級ユーザーの何%かは、だんだんとプレー時間が増え、結果アイテム数を増やしたくなります。そのユーザーにはさらに(例えば10,000円)課金してもらいます。そして上級ユーザーに変化していきます。
上級ユーザーから神へ
そして、中級ユーザーの一部が、ゲームにどはまりします。この層のユーザーは買えるアイテムは何でも買うようになります。月に何十万円も課金をするようになります。
これだけの金額を支出すると、そのゲーム界ではそれなりのステータスも得ることになります。課金が多ければ多いほど、神の領域に近づいていくのではないでしょうか。こうなると、もうゲームをやめるという選択肢はありません。そのため、継続的に何十万円も課金し続けることになります。
まとめ
1つのゲームで一人のユーザーから何十万円も売上を生み出すなんていうことは、定価が決まったパッケージゲームであり得なかったことですが、インターネットの課金システムがそれを実現してくれました。