遠藤です。みなさんこんにちは。
四季折々、園芸店をのぞいてみると、いろいろな草花がそのステージに登場しては去っていきます。そんな中で、最近見つけた植物にこんなのがあります。
この2つの花を観察して、みなさんはどんなことを見つけだすことができますか?
私が気づいたのは左側の花はちょっと枯れ気味ですが雄しべはたくさんの花粉ができていて、右の花は花粉はもうすっかり出払ってしまっています。
雌しべに注目すると、左側の花の雌しべはまだ、先端(柱頭)が開いていないので、花粉を受け取ることができないのに対して、右の雌しべは柱頭が開いていて、花粉を受け入れる準備が整っています。
そうです、雌しべと、雄しべは成熟の時間を同じ花の中で「時間差」を付けているのです。みなさん分かりましたか?
私たちは学校の授業で、「雄しべの花粉が雌しべについて種子ができます」と習ったと思うのですが、その時、説明に使われる図は1つの花の中で受粉が行われていると思います。
それだけが原因ではないと思いますが、同じ花の雄しべの花粉が雌しべについて種子ができることが普通だと思ってしまいがちです。
しかし、そうした生殖の様式(自家受粉)はあまり一般的ではありません。
自家受粉にも利点はあるのですが、できれば、同種他個体と花粉をやりとりした方が多様性に富む子孫を増やすことができるのです。
上の写真の植物は1つの花の中で雄しべと雌しべの成熟する時期をずらすことで「自家受粉」を防いでいるのです。
どちらの成熟が先なのかは種によって様々で、雄しべが先に熟して雌しべがあとのパタンの植物を「雄性先熟」逆に、雌しべが先に熟して雄しべがあとに成るパタンの植物は「雌性先熟」の植物といいます。
今回の植物は「雄性先熟」でしたね。多くの植物でこの「時間差」を観察することができますから、みなさんも観察してくださいね。
次ぎに、自家受粉を防ぐ別のパタンを紹介しましょう。
これも、同じ園芸店で見かけた植物です。
どうですか?彼らの「工夫」は分かりますか?ちょっと高度な工夫なんですよ。
同じ種でも、雄しべの長さと雌しべの長さが違うのが分かるでしょうか?
上の写真、Aの花の写真では、雄しべはよく見えていますが、雌しべは花の中に引っ込んでしまって観察することができません。一方、下のBの花の写真では逆に雄しべは花の奥の方にちらっと見えるだけなのですが、雌しべは柱頭が花の外にまで出ています。
ここまで観察して理解したところで次の図を見てください。
これは、A,Bの花を縦切りにして横から見た見たところの模式図です。
雌しべの花柱の長さに注目してAの花を短花柱花(たんかちゅうか)、Bの花を長花柱花(ちょうかちゅうか)といいます。早口言葉みたいですね。
では、なぜ、このような2形があるのでしょうか?
この花がどんな風に受粉をするのかを見て行きましょう。まずこの花は雌しべの付け根に蜜を出します。そして、昆虫を呼びます。
ここで、左側の短花柱花の花にハチがやってきて密を吸ったとしましょう。そうしたら、短花柱花の花粉(赤で示しました)は蜂のどこに着きますか?
だいたい顔のあたりに着くのではないでしょうか?
そして、今度は、右側の長花柱花の花に蜜を求めてやってきたとしましょう。そうしたら、ちょうど先ほど顔のあたりについた花粉にぴったり対応するように雌しべがちょうど蜂の顔のあたりになるような位置にありますよね。こうして、無事に、短花柱花の花粉を長花柱花の雌しべが捕まえることができます。
一方で、もしも、もう一回同じタイプの短花柱花にハチがやってきたらどうでしょうか?花粉は顔の当たりにまた付くかもしれませんが、雌しべに付くことはありません。
さて、今度は、違うハチが長花柱花の花に蜜を求めてやってきました。今度は青で示した花粉はハチのどこに付くでしょうか?そうですね、だいたい口先に付くのではないでしょうか?
このハチが短花柱花を訪れたときと、長花柱花をもう一度訪れたときのことを考えてみてください。
・・・・・もうおわかりでしょうか?この植物は昆虫の体の異なる位置に花粉を着けることで同じタイプの花同士で受粉しないようになっているのです。
ほかにも、もっと簡単に1つの個体の中で雄花と雌花というように性によって花、自体を分けてしまう方法(キュウリやカボチャなど)や、雄木、雌木、のように、個体そのものも分けてしまうような方法(カエデなど)で自家受粉を防ぐやり方もあります。
身近な植物たちのよりよい未来を作る工夫を、みなさんも探してみてください。