遠藤のモバイルガーデン:葉のかたちと葉脈 運河をたどろう

モバイルガーデンバナー

遠藤です。みなさんこんにちは。

前回はスペースフレンド2003の様子を紹介して、葉脈のレプリカ標本を作るお話をしました

このようなきれいな標本ができていましたね。

葉脈レプリカ標本は特別な機械は必要ありません。紙は、みなさんお使いのプリンタ用紙やコピー用紙で十分ですし、印刷用のローラーと、インクは画材店で版画用のものを簡単に購入することができます。

ローラーが1000円くらいと高いのでちょっと試したいという方は100円ショップで売っているカーペットのほこりを取る粘着シート式ローラーを使っても良いですね。

買ったままの状態で最初のシールをはがさずに使えば代用することができます。

レプリカ標本で印刷された葉脈というのは、なんのためにあるのかというと、葉に水分を供給し、光合成でできた有機物を運び出すためにあります。

いわば、「運河」に例えることができます。

葉のかたちは光に当たる工夫等でそのかたちが自ずから決まってきます。そこで、必要な葉のかたちにを維持するために必要な運河を設計をする必要があります。

いろいろな方法で運河を設計する、そのやり方が「葉脈の模様」の種類となるのです。
簡単にいくつかの植物の「設計」を見てみましょう。

1)クリ

クリの葉脈は大変シンプルですね。真ん中に大きな運河(主脈)をつくって、左右に平行な小さな水路(側脈)を作るというやり方です。

もしも、光の当たり具合の関係で葉の下側をハート形に面積が増やせることになったとします。そうしたら、どういう風にすればいいでしょうか?

左の葉から右の葉へかたちが変わったとき、どのようにすればいいでしょうか。

緑色の矢印で示した葉脈は延ばせば、右の葉は簡単に対処できますが、赤で示した葉脈を作ろうとすると、赤い矢印 A の部分が葉脈が空中に浮いてしまい、いままでの「クリ」システムの運河ではハート形の先端の部分に水を運ぶことができません。

どうやってこの状況を解決したらいいでしょうか。

1つは「クリ」システムを改良して適応する方法と、もう一つはまったく設計を変えて、与えられたかたちに適応した運河を設計するやり方とが考えられます。

2)アカメガシワ

観察してみるとアカメガシワだけではなく、多くの植物は「クリ」システムを改良したやり方を採用しているようです。

この葉脈レプリカ標本はアカメガシワです。

じっくりと観察していると、黄色い線で示した部分が、「クリ」システムを引きついている部分と緑の矢印を境に赤い線で示した部分が新しい改良部分であることがわかります。

新しい改良部分は緑の線を第2の主脈と見なして、「クリ」システムを2回繰り返し適用することで新しいかたちに適応していることがわかります。

模式図にしてみると、

このように、矢印Aで示したように空中に運河を造ることができないため、矢印Bのような運河を造っています。

さあ、その目でもう一度、アカメガシワの葉をよく観察してみると、

実は、アカメガシワは「クリ」システムを2回だけではなく3回適用していることがわかります。

青い線で示したように、「クリ」システムを何回も適用することで、いろいろなかたちに対応させているようです。

3)トコロ

今度は、運河を設計する上でアカメガシワと全然違うやり方をしている例です。
トコロは、単子葉植物に属するので、運河(葉脈)をクリのように分枝させることはできません(単子葉類は平行脈でしたよね)。

クリと比べると横に広いという点ではアカメガシワとトコロとは同じ課題に取り組んだわけですが、トコロは、このように、運河自体を湾曲させることで課題をクリアしているわけです。


今回は3つの例だけを説明しました。
野外にはもっとたくさんのおもしろいやり方で葉の上に運河を築いている植物たちが生きています。

みなさんもどんな葉でも結構ですので、観察してみてください。それぞれのアーキテクト(建築家)のやり方を観察して欲しいと思います。
 
 
 

タイトルとURLをコピーしました