遠藤です、みなさんこんにちは
ある場所で植物が生育できるかどうか、枯れないで生きてゆけるかどうかの条件には大きく分けて「光」、「温度」、「水」3つがあるといわれています。
移動することのできない植物は「温度」と「水」については種が落ち、芽を出した瞬間に運命が決まってしまうのに対して「光」を求める工夫は芽を出した後にでもすることができます。
他の植物たちと光を巡る競争して勝利するにはどうしたらいいでしょうか?
もっとも簡単な方法は木のようなしっかりした幹を持ち、ほかの植物よりも「高いところへ」行けばいいですよね。
しかし、すべての植物が木になれるわけではありません、細い茎しか持たない植物はどうしたらいいでしょう。
そんな、弱い植物の中につる植物があります、つる植物は自らが持つ限られた資源を「ほかの木に巻き付いて」素早く木の上までよじ登り、光を横取りするという工夫で光を巡る競争に打ち勝ってきた植物群です。
いわばつる植物は「人のふんどしで相撲をとって」いるわけですね。
つる巻き方にはいろいろな種類があり、
- (1)巻きひげを持たずに植物自体が巻き付くタイプ
- (2)巻きひげをもって巻き付くタイプ
- (3)巻きひげの先に吸盤があるタイプ
などの方法で他の物に巻き付いています。今回は特に巻きひげに注目して観察してみました。
一つめのツル植物はツタという植物で、この植物は巻きひげの先端が吸盤で終わっている(3)のタイプです。
緑の矢印はツル、赤の矢印は芽を指しています。
緑の矢印と赤の矢印の順番に注目すると
「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」の順番に出てきていることがわかります。
二つめのツル植物はヤブガラシという植物です。
ヤブガラシは(2)のタイプの巻きひげが巻き付くタイプの植物です。
こちらも、ツルと芽の順番は「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」のようになっていることがわかります。
ツタとヤブガラシはそれぞれ異なるグループに属しています。グループの異なる2種の植物で同じ巻き方をしているということは、この「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」という順番に意味があるということなのではないでしょうか?
この並び方を考えるために、模式図を書いてみました。
模式図では葉は黒、ツルを緑色、芽を赤で表しています。*1)
左側の模式図はツタと、ヤブガラシの2種で共通したツルの出方、すなわち「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」の出方を表しています。
この「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」の順番がもっとシンプルに「ツル・芽、ツル・芽」の順番だったらどうでしょうか?
そうなった場合は模式図の右側のようになるはずです。
模式図の右側のようなツル植物があったら、まず、片側だけしか固定できないので風が右側から吹いたりすると葉が裏返ってしまい、剥がれやすくなります。
また、芽が片側にしかないので、成長も片側に偏ってしまい、自分たちの葉同士で光の奪い合いが起こってしまいそうです。
では、今度は、「ツル・ツル・ツル・芽、ツル・ツル・ツル・芽」の場合や、「芽・芽・ツル、芽・芽・ツル」になった場合などをこの模式図を参考に自分でも書いてみて下さい。
そうすると「ツル・ツル・ツル・芽、ツル・ツル・ツル・芽」の場合は結局「ツル・芽、ツル・芽」の場合と同じで片側だけに芽が偏ってしまいますし、さらにツルの数を増やすと、芽の左右のバランスは良くなっても、芽の数が極端に減ってしまって、せっかく光を求めて高いところにゆく意味がなくなってしまいまいます。また、芽が多い場合は逆につるとつるの間があいてしまい強度的に不安定です。
このようにいろいろなパターンを考えてみると「ツル・ツル・芽、ツル・ツル・芽」のパターンがもっとも合理的であることがわかります。
いろいろなグループが進化の過程で様々な試行錯誤の果てにたどり着いた植物の「かたち」がある一定の似た形態になることを進化の世界では平行進化といいます。
ツタや、ヤブガラシ以外でもツル植物の巻きひげ戦略はどうなっているかを観察してみるとおもしろいと思います。
*1)
模式図では葉の葉腋に芽やツルができているように書いていますが、正確には枝分かれの方法は「仮軸分枝」という方法をとっており、より詳しい観察をするにはこのことを考慮に入れる必要があります。