遠藤のモバイルガーデン:星砂を観察してみよう ホシズナと海の炭素循環

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遠藤です。みなさんこんにちは。

海水浴などで、海に行くとよく、こんなおみやげありますよね。

この中に入っているのが「星砂」です。みなさんも、一度くらいはもらったことがあるのではないでしょうか?

ところで、みなさんは「星砂」っていったい何だと思いますか?

沖縄の観光パンフレットを見てみたら、
「星砂は空のお星様の子供たちが、海の大蛇に食べられた亡骸(なきがら)」
という伝説があるんだそうです。星の子供なんて、ロマンチックで物語ができそうですね。それから、お守りとして「海岸で年の数だけ星砂を拾って持っていると幸せになれる」っていう言い伝えもあるんだそうです。

友人に星砂について聞いてみたら、「サンゴのかけらじゃない?」っていう人が一番多かったです。私も何かの生物の骨格の一部とか、サンゴのかけらだと思っていました。

さて、こんな風に、かわいい風貌の星砂ですが、実はこれ、1粒1粒が1つの生物なんです。

種類としては原生動物。そう、アメーバーの仲間なんですよ。ちょっとびっくりですね。種の名前も「ホシズナ」といいます。生きているときは星砂の星の腕あたりから、仮足と呼ばれる触手を出し、これで、えさをとったり、物につかまったりするそうです。海の中でホシズナが一生懸命サンゴや、海藻にしがみついている姿を想像すると、やっぱりちょっとかわいらしいですね。

星砂は実は生物の殻だったということがわかりました。ではその殻は何でできているのでしょうか?これは、サンゴと同じ炭酸カルシウムでできています。

炭酸カルシウムは化学式で書くとCaCO3と書くことができます。今、地球温暖化で注目されている二酸化炭素はCO2でしたよね、炭酸カルシウムがCaCO3ですから、炭酸カルシウムがたくさん出来ると空気中の二酸化炭素が減りそうな気がしますよね。

私も、ずっと、そう思っていました。しかし、海洋生物学者の友人に聞いてみたところ、むしろサンゴやホシズナが炭酸カルシウムを作ると二酸化炭素が増えるんだそうです。

サンゴやホシズナは炭酸カルシウムの体を作る時に、海の中の炭酸イオン(HCO3)という物質を使い、海の中に溶けている二酸化炭素を直接使うことはしないのです。炭酸っていうのはみなさんが飲んでいるサイダーやラムネの、あの炭酸と同じ成分です。

サイダーやラムネは二酸化炭素を水に溶かした物なのですが、海にある炭酸は同じ物質でも山にある石灰石(炭酸カルシウム)が溶けたときにできる炭酸なのだそうです。

ちょっとややこしくなってきましたか?

山では石灰石が雨で溶かされるときに二酸化炭素を吸収して炭酸を作ります。
これを式で書くと

CaCO3(石灰石) + H2O(水) + CO2(二酸化炭素) → Ca2+(カルシウムイオン) + 2HCO3(炭酸イオン)・・・・(1)

そして、海の中でサンゴやホシズナは自分の体を作るときに炭酸を吸収して二酸化炭素を排出します。
 
これを式で書くと

Ca2+ + 2HCO3 → CaCO3 + H2O + CO2↑・・・・(2)

海の中の二酸化炭素は常に飽和状態にありますので、サンゴやホシズナが排出した二酸化炭素は水に溶けることなく空気中に放出されます。

(1)の式と(2)の式はちょうど反対になっていることに注目してください。

図にしてみると
 

こんな風になります。

では、山の石灰石(炭酸カルシウム)はどこから来たのでしょうか?それは、サンゴやホシズナの殻が海底に堆積して地球の内部を通って地殻の変動で山になった物なのです。

この地球の内部を通るサイクルは1サイクルが10億年程度であるとされています。

今、私が見ている星砂がまた星砂として戻って来るにはあと10億年くらい掛かるわけですね。


この話は以前、小学6年生向けの講演でお話ししたことがあります。そのあと星砂の含まれる砂浜の砂から星砂を分ける実習を行ったのですが、その時に「年の数だけ・・・」の話をしたらみんな熱中してしまってほとんどの生徒が自分の年以上に星砂を拾っていました。

実習の最後、質問時間の時にある生徒が心配そうな顔をして
「あの、25コ星砂を拾ったのですが・・・」と質問をしてくれたので
「じゃあ、25歳の時に、幸せが来るんじゃないかな?」って答えたら
「うーん。じゃあ25歳で結婚?結婚するのかなっ!」って言っていました。会場が笑いに包まれました。

14年後の彼女が幸せな結婚ができるといいな、と思いました。
 
 
 

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