kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第23回 ビジョナリーのいる会社、いなくなった会社

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。PCの世界ではいわゆるツルピカ液晶が標準になっていますが、マイPowerbookにもそれっぽいフィルムを張ってみました。ホコリのない風呂場で注意深く張ったつもりがやっぱり1カ所ホコリが・・・まあ、DVDを見るにはあまり気にならなそうなので、しばらくこのまま行ってみようっと。

さて、そんなPowerbookでこのところ激しくリピートしているのは、日本ではまもなく公開になる「ファインディング・ニモ」のDVD。日本でもそれに併せていろいろな特番がくまれていて、先日放映されたのはサンフランシスコにある、広大な敷地にサッカー場やプール、そして信じられないくらい個性的なオフィスがあるピクサー・スタジオを紹介した番組でした。ピクサー・スタジオの様子はDVD「モンスターズ・インク」のなかにも特典映像として納められていたので、もしかしたら皆様も見たことがあるかもしれません。この番組中では「トイ・ストーリー」を始めピクサー・ムービーの基礎を作ったジョン・ラセター氏も登場。超多忙であるというはずのラセター氏が気がついたら会議を抜けてきたり、はたまた厨房で給仕係を演じていたりと、信じられないほどのサービス精神で出演していたのはびっくりしました。とにかく彼の言葉の中には「自分たちが楽しまないで、人を楽しませることなんてできない」という信条がにじみ出ているのがとっても印象的でした。

このジョン・ラセターさん、「ファインディング・ニモ」がクロージング作品として公開された、先日の東京国際映画祭のために来日していたのですが、そのときにラセターさんが楽しみにしていたのはあのスタジオ・ジブリの訪問。ラセターさんが個人的に友情を深めている宮崎駿監督との出会いの様子も同番組でつたえていました。この二人ですが、アメリカで「千と千尋の神隠し」を公開する際に、ほかならぬこのジョン・ラセターさんがアメリカ版のプロデュースを請け負ったのです。昨年、この映画がアカデミー賞を受けたとき、色紙にラセターさんへの感謝の言葉が書かれていたのも記憶に新しいと思います。ラセターさんも自分の映画が受賞したかのように喜んでいたのが非常に印象的でした(このあたりの友情については、先日発売された「ラセターさん、ありがとう」でも触れられているようです。まだ未見ですが)。

モンスターズ・インク、およびファインディング・ニモのDVDを見ていて特典映像にたびたび登場するこのラセターさんの一言一言、そしてピクサー社のメンバー全員がラセターさんを心から尊敬し、リーダーとして認めているところをみると、ひょっとしたらこの人は現代のウォルト・ディズニーなんじゃないかと思うことがあります。新しい技術、とりわけ3DCGを利用しつつ、その技術を感じさせないほどのストーリーテリングの能力。そしてピクサーのすごいところは、「モンスターズ・インク」のピート・ドクター監督や「ファインディング・ニモ」や「バグズ・ライフ」のアンドリュー・スタントン監督など、ラセターさんのあとに続く人間がしっかり出てきているということです。同番組内でも、スタジオ・ジブリの鈴木プロデューサーが、ピクサーの中心メンバーがラセターさん含め皆30代であることにふれ、今この若者たちが世界を制覇していることに感心しておりました。ウォルト・ディズニーも初めて長編を作ったのは30代。私が生まれたときにはウォルトはすでに他界していたのですが、ラセターさんのようなビジョナリーと時代を共有出来るということは実はすごい事なのかもしれません。

このところ、ディズニー社との契約更新が話題になることが多いピクサー社ですが、もしこの契約更改時にディズニー社側に有利な話でまとめようとするのならば、ピクサーはディズニーではない配給会社を選ぶ可能性もあります。以前にも書きましたが、個人的にはピクサーはディズニーのライバルとなるべき会社だと思いますので、今後を考えるとこのディズニーとの契約が破談になるとおもしろい、とおもいます。

過去、ディズニーがまだ独自の配給網を持っていなかったとき、配給会社から厳しい条件を突きつけられたことから、ウォルトは「自分の映画を好きなようにコントロールするには、自分が配給するしかない」と考え、今のような大きなメディア・カンパニーになりました。ひょっとしたら、ピクサーはこの歴史をなぞるように動くのかもしれません。そして、もう一つ興味深い過去として、ディズニーはABC放送との契約により金銭的協力を得たことでロスのディズニーランドを建設することができました。しかし現在、そのABC放送はディズニーの傘下にあります。

今期のディズニー社の決算は、「映画部門の好調」により業績は上向きました。しかし、その業績をもたらしたのはアニメーション部門ではなく実写部門の「パイレーツ・オブ・カリビアン」、そして、ピクサーが作った「ファインディング・ニモ」という、ちょっと皮肉な状況です(そして、テーマパーク業はかなりの苦戦)。このままですとディズニー社は苦境に立たされるかもしれませんが、もしかしたら、将来のディズニーを救うのは元気なピクサーなのかもしれません。過去のディズニーとABC放送の関係のように・・・

では!
(kyokucho/宮田 健)

タイトルとURLをコピーしました