kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第48回 ディズニー・アット・ウォー

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

まずは前回書き逃したことを。短編と言えばこれを定期的にリリースしているのがライバルのピクサー。アカデミー短編賞にもノミネートされた新作「Boundin’」ですが、これが日本先行で公開されています。場所はあのジブリ美術館。今行われているピクサー展の中で公開されているとのことです。興味ありありなんで見に行かなくては。

そして今回の話も短編。皆さんは、「チップとデール」というキャラクターをご存じでしょうか。ディズニーのキャラクターファミリーの中ではわりと新しい(と言っても60年前ですけど)キャラクターで、日本でも最近グッズが大量に出ている人気キャラクターです。ところが、この二匹がメジャーデビューした作品を見たことがある人は非常に少ないのです。この幻のデビュー作の名は「プルートの二等兵(Private Pluto)」。実は戦争が深く関連した作品なのです。

第二次世界大戦とディズニー社の関係は深く、このころスタジオの施設は軍に吸収され、海外の興行収入も接収されてしまうなど、スタジオの運営に大打撃を与えました。また、軍はスタジオに対して、教育のためのフィルムをアニメで作れ、と言う命令が下され、ウォルトはアメリカ軍のために、自社の重要なキャラクターであるドナルド・ダックを差し出しました。このあたりのお話は伝記「ウォルト・ディズニー」等でも触れられていたのですが、内容が内容だけにそれらの作品がその後公開されることはほとんど無く、「幻」とされていました。

しかし、アメリカで発売されたWalt Disney Treasures2003年版(実際の発売は2004年5月)にて「On the Front Lines」というDVDが発売されました。このDVDには、戦時中に作られた実に貴重な短編、長編が含まれています。今回は、日本におけるディズニー感とは明らかに異なる短編について紹介しましょう。

このDVDでもっとも貴重なのは、1943年のアカデミー短編賞を受賞しながら日本ではほとんど見るチャンスの無かった作品「総統の顔」でしょう。主人公はあのドナルド・ダック。独裁政権下のナチ・ランドに住むドナルドのお話なのですが、冒頭から日独伊の3君主(ヒットラー、ヒロヒト、ムッソリーニ)に敬礼させられるドナルドが登場・・・食事も木の板のように堅いパンをノコギリで切り、、コーヒーも豆一粒をこっそりと入れるしか出来ず、爆弾工場でこき使われ(休憩はバックに山の風景が出てくるだけ)、最後は頭がおかしくなって・・・という、アメリカから見た敵国を徹底的にちゃかすという内容。最後、ドナルドは自由の女神像を抱きかかえ、「ああ、アメリカの国民で本当によかった!」と締めるという、何ともアメリカ的な作品に仕上がっています。この作品は当時大ヒットし、同タイトルのテーマ曲のレコードも飛ぶように売れたそうです。確かにこの曲、軽快なリズムでハイル!ハイル!って歌ってるので耳に残りますが、冷静に考えるとディズニーがこんな曲を作るって言うのはかなり意外です(この曲、そのハイル!のあとに必ずブゥ、という侮蔑音が入っているのがポイント)。

そのほかにもこのDVDには、ウォルト自身が身を乗り出して映像化した長編「空軍力の勝利」や、先の「プルートの二等兵」、またアメリカ国民に対して、納税と言う形で国を支えよう、と言う教育的要素のある短編「新しい精神」など、ディズニーの作品としては今まで(そしてこれからも)見たことがないような短編が多数含まれており、貴重としか言いようのない内容となっています。

なぜかネット界では異常なまでにアンチが多いディズニー社ですが、上記の話を聞くだけだと「やっぱりディズニーは・・・」みたいな事を言う人がいるかもしれません。正直、ウォルト・ディズニー本人がどのような考えを持ってやっていたかというのは伝記くらいでしか理解するすべがないのは事実です(確かに、「闇の王子ディズニー」みたいな本も出てますし)。ただ、アメリカが戦争の最中にあるという今の時期にこういうものをちゃんとリリースし、歴史に残そうとしたディズニー社の心意気は評価したいと思います。この作品をリリースすることで、ディズニーのキャラクターでさえ「徴兵」されてしまうという、戦争の悲惨さを伝えたかったのではないかと私は思っています。さすがにポジティブシンキングすぎますが(苦笑)。

さてこの作品、日本で見たいという方も多いとは思いますが、内容が内容だけに日本発売は厳しいんじゃないかと思います(パール・ハーバーがなぜかヒットしたということからほのかな期待はあるのですが・・)。興味のある方はぜひこちらを参考にしつつ、アメリカ本国版のDVDを見られるようにしてしまいましょう。「総統の顔」はそのバックグラウンドの悲惨さとは全く正反対に明るく面白い作品です。それだけに、ちょっと背筋が凍る作品でもあるのですが。

では!

(kyokucho/宮田 健)

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