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平成の終わりにプロジェクトXのレビュー記事を読んでいろいろと考えさせられる。その1

アマゾンの会員向けにプライムビデオなる無料で観られるサービスがある。

そのコンテンツの1つにかつてNHKが制作した「プロジェクトX」があって好きで時々観ている。昭和生まれのおっさんにとってはこの手のドキュメントは最高に面白いと思う。

達成困難と思われるプロジェクトをチームリーダーとメンバーが知恵を出し合い、多大な時間を費やして、困難を乗り越えていく姿は美しいと思う。解決出来そうにないプレッシャーの中で、人々のチャレンジする姿が神々しい。

そしてレビューを読むと、自分と同じように感じている人々が圧倒的に多い。プロジェクトXというのはそういう観方をする番組であって、他の意見ががあるなんて想像もしていなかった。

しかしそのような考えの中で、最低評価をつけたある1つのレビュー記事に衝撃を受けた。

以下がたぬきちさんという方のレビュー内容である。

私は平成一桁生まれだが、見ていて辛くなってしまった。

妻が家を支え夫が仕事にすべてを費やす、という役割分担は今日では多くの人に選ばれる生き方ではない。家で家事や子育てをしながら支えてくれる人は今やおらず、寝食を惜しんででも仕事に打ち込めるだけの待遇は望めない。これからの時代、プロジェクトXで取り上げられるような成果は期待できるのだろうか。

賃金の上昇も見込めず、夫婦共働きでようやく生活が成り立つ今、プロジェクトXに登場する技術者たちのような働き方をしていたらお互いに身体や精神を壊してしまうし、子育てなど到底無理だ。

当時を懐かしむ余裕のある人、支えてくれる人や相応の対価がある人は共感もできるかもしれないが、私には到底、共感はできなかった。

私の知る限りアマゾンのレビュー記事へのコメントというのはほとんど無いと思うのだが、このレビューに対しては複数コメントが寄せられており、このレビューへのおっさん達の関心の高さ(衝撃の強さ)がわかる。そして、建設的なコメントのやりとりが行われている。

Pbさんという方が以下のようなコメントを残している。

横から失礼します。

この番組は「昭和の仕事・働き方が最高だった。現代も昔の感覚に立ち返るべき。」という訴えはしていませんよ。「昭和の時代に困難に立ち向かった人々いて、大きな功績を残した。その努力や問題に立ち向かう姿勢・勇気は後世に語り継がれるに値する」というスタンスの番組です。

人間社会の歴史にはそれぞれの時代で観念が移り変わっていくもので、この昭和~平成初期という時代は「男は外で仕事・女は家で家事育児」が一般の社会通念でした。それを30年という長い時を経た現代の価値観・文化観で批判的レビューされるのは、些か的外れかと思います。

現代人が「戦国時代は戦争ばかりで野蛮、現代からは考えられない」というようなものです。

それに対してレビューを書いたたぬきちさんが以下のように返答していました。

コメントをありがとうございます。
言葉数が少なく、また感情的になってしまったと思っております。私は放送当時は、まだ小学生でしたが、この番組を憧れを持って見ていました。

ただ、私はこれらの技術が栄えた時代と今が、戦国時代と現代程に価値観が離れているとは思っておりません。社歴がそこそこの会社であれば、役員と新入社員の年齢差程度です。憧れを持って見ていた小学生の私と、今の私で全く価値観が変わってしまったように、急速な時代の変化の中、価値観が異なる世代が、組織の中で同居しているのを実感しています。

私がこのレビューを残したのは、番組の出来の批判ではなく、当時の価値観と今の価値観が違うと考えている人もいる、と言うことがこの番組の働き方を、今もなお良しとする方々の目に触れるようにしたかった為です。

他の方々のレビューを見て、思うことがある人は少なくないはずです。価値観が変わっていく過渡期である、という意味もありレビューのタイトルを「平成が終わる今、これを見る意味とは」としました。

amazonのレビューの使用方法としては間違っているかもしれません。
ただ、働き方が社会問題になっている今、手放しに評価して良い映像ではないと思っております。

そしてAmazonのお客様さんが以下のようにコメントしています。

同じ平成一桁世代としてとても共感します。
まず僕自身もこの番組を小中学生の頃に毎回ワクワクしながら見ていました。

久しぶりにあの高揚感を楽しめると思って見始めたところ、強烈な違和感を感じました。もちろん女性を主人公にした回もあるにはあるのですが、基本的には「男たちの物語」として男性中心社会を美化し、寝る間も惜しむ犠牲や命そのものも危険にさらすやり方等を含め、印象的なBGMと巧みな番組構成で強化して映し出してしまっている。

「女たち」の立場や役割がおしなべて矮小化されていることも感じます。当時はあってしかるべきものであった歴史的事実、そのこと自体は否定されないものの、これを今のわたしたちが「どう見るか」については慎重になりたいと思います。

また、最近TVをつければ見ない日は無いと言っても過言ではない、日本万歳称賛番組の問題とも通ずるところもあると思いました。根っこはこういうところにあったのかもしれないと。

Pbさんがコメントされたことはもっともなのですが、時代の変遷のなかで、過去の価値観と現在の価値観を十分に比較したうえで批判ではなく違いをはっきりさせることが重要で、歴史における違いに無頓着なまま過去の価値観に無意識にからめとられては危険だと思うのです。(教育勅語復活の議論などとも似ていますが。)

ただ娯楽動画として流し見することもできますが、今の我々はどうこの「プロジェクトX」を見るのか、そのための視座をきちんと考えたいです。たぬきちさんが「平成が終わる今、これを見る意味とは」というタイトルで投げかけてくださっているように。

プロジェクトXがなぜ終わったのかが当時は理解できませんでしたが、久しぶりにみることで時代とともに変わっていくものが確かにあることを改めて感じました。

効率が最重要視され、技術革新にいたる長い道のりに必要な資金や「余裕」、良い意味での「無駄」がいっそう排除されるなか、個々の幸福、人権、well-beingなどが十分に尊重されていくことと、技術革新や進化を起こしていくことの難しさ、解決しなくてはならない課題の多さを感じます。

そしてtofujiさんが以下のように述べています。

プロジェクトXは、言ってみれば技術系のオリンピックやワールドカップみたいなもんだから、一般人に「共感」を求めるのは無意味だと思います。

また、プロジェクトXに出てくる人たちは「家族が支えてくれるから」とか「お金がもらえるから」といった打算に基づいて行動していたわけではなく、単に「好きだから」とか「食うため」にやっていたわけで、実際、同じように努力した人の大半は思うような成果を上げられずに破産したり、挫折して転向しました。かくいう私も転向した人間の一人です。

プロジェクトXは、そこまで深く掘り下げる番組ではなく、実際現場にいた人間からすると表面的すぎて面白くないのですが、逆にこのコメントほど浅はかに解釈されると、ちょっとかわいそうな気がしました。

と同時に、私は20年以上(留学生のいる)学校で教えているので、このコメントが今の(日本の)若い人の典型的な感想であることもよく判ります。

ですから、プロジェクトXは「平成前期に、昭和の戦後を描いた特徴的な作品」として歴史に残ることになるでしょう。つまり、これからの日本でプロジェクトXに描かれたような成果が出ることはなく、当然プロジェクトXのような作品が作られることもない、というわけです。

そして前出のPbさんが以下のようにコメントしています。

こちらこそ突然の無礼な意見と飛躍した比喩でした。
ご容赦ください。

私の考える「平成が終わる今、これを見る意味とは」、「大きな困難も人間の知恵で乗り越えることができるという勇気をもらえる」ことです。

価値観の変化によって現代社会が直面する、働き方についての諸問題。たぬきちさんの言われるように、大きなひずみとなっています。現代の様々な組織の中でも軋轢となっている事でしょう。

かくいう私も昔、職場の上層部(団塊の世代)と喧嘩になったことがあります、本当に頭の固い人達です(笑)。それでも私は、この番組の中で語られてきた人々のように、人々の知恵と志で切り開いていけると信じます。

古い価値観と新しい価値観、どちらにもメリット・デメリットがあるでしょうが、自身と異なる主張をよく聞き理解を深めることで、後の世代に誇れる「良い物」が残せると思います。それを生み出すための原動力、勇気をこの番組を見てもらっています。

ご返事ありがとうございました。

その2に続く

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