遠藤のモバイルガーデン:猫の恩返しを見る 名前の持つ力と絵

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遠藤です。みなさんこんにちは

スタジオジブリの「猫の恩返し」というアニメーション映画を見ました。

ジブリスタジオの映画はどれも有名なのでみなさんはもう劇場などでご覧になっているかもしれませんが、お話の内容は、主人公ハルがひょんなことからトラックにひかれそうになった猫を助けてしまったために猫たちの“恩返し”として猫の国に招待されることになってしまい、気に入られてしまって猫の国にいる王子様のお后様にされてしまいそうになるお話です。

ハルの平凡な毎日をちょっとリセットしたい好奇心が起こす物語・・・といった内容で、とてもすがすがしいお話でした。

スタジオジブリのアニメーション映画はどれも、細かい背景までリアリティーを持って描かれていて、密度の高い映画だなと思いました。

私は、映画を見ていく途中で一カ所だけ、ちょっと心に引っかかった場面がありました。それは。。。
 

この場面です。

この場面はハルが猫のムタに導かれて「猫の事務所」に向かうところの1場面です。

この場面は全体で2秒か3秒しかないほんの小さな1コマなのですが、「なんかヘンだな」っていう思いがしました。

全部見終わってから、巻き戻しをしてその場面を再生しなおしてみました。最初見たときはなんか変な感じがするな、と思っただけだったのですが、見直してみるとどこに引っかかったのかがわかりました。

どこ引っかかったのかというと、右下にはえている「ヤツデ」の葉のかたちが何となくおかしいなと思ったのです。

みなさんはどこがおかしいと思いますか?

ちょっと拡大して、葉の「指」の枚数を数えてみましょう

みんな8つの指を持っていることがわかります。

以前みなさんと一緒に考えてきた、ヤツデの話を思い出されましたか?
もしも思い出せない方がいらっしゃったら、ちょっとこちらのページで復習してみてください。
 

どうでしたか?見ていただければわかりますが、ヤツデの指は7か9が多く、8はほとんどありません。指の数が1個違うということは、ただそれだけの小さな違いではありません。もしも、これが、7枚や9枚でなくて、5枚や11枚でも不自然だと思わなかったでしょう。

指の数が7や9の奇数から8の偶数になると、本来は葉の真ん中に大きな脈がありその左右に指ができてゆき、(真ん中+左右=奇数枚の指となるという)ヤツデの持つ葉のグランドデザインが大きく変わってしまいます。そのために、良く描けているのに不自然さが残ってしまう、ということが起きていたのです。

例えば、iMacを操作している手元がアップされたらキートップにWindowsキーが映っていた、そんな感じです。キーが1つ違うだけ、という問題ではないですよね。

この映画の中にでてくる植物をもう一回よく観察してみると、もちろん、植物の映画ではありませんので植物の絵はさして正確ということはありません。でも、不正確なら、不正確なりに自然に見える作画がなされています。

これは多分、実際の作画は写真等を参考によく観察してその上で抽象化して描かれているからではないかと思います。時には外にでて実際の植物を観察しているのではないでしょうか?

ただ、このヤツデだけは作画をした人が「ヤツデ」という名前に引きずられて、「指は8本あるはず」と思い、実物を観察したはずの自分の目からの情報がマスキングされてしまったからなのではないかと思います。

このように、「名前」というのは便利なものですが、一度名前を聞いてしまうとそれで安心してしまって対象をよく見ることがおろそかになることがあります。

私たちの日常生活でも「レッテルを貼る」とか「色眼鏡で見る」なんて言いますが、気をつけたいですね。
 
 
 

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