kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第41回 もう一歩!ブラザー・ベア

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

日本での公開が先月末だった「ブラザー・ベア」ですが、アメリカではほぼ同時期にDVDが発売されました。この作品、近年では一番出来のよかった「ターザン」のスタッフが再結集し、そしてフロリダのスタジオの最後の作品になってしまったもの。日本では、オープニングを天童よしみが歌うとか、劇中の歌をフィル・コリンズ本人が日本語で歌うとかで話題になったりならなかったり。私もかなりの期待をしていた映画のDVDだったので、到着後すぐ見てみました。

私がこの映画に期待していたことは、ターザンのそれと同じようなものでした。つまり、「フィル・コリンズの歌」。ターザンの時はオープニングから彼の歌でしたし、本編全てでびっくりするほどフィル・コリンズ色が前面に出ていました。それでいてディズニー・ミュージックの伝統となるようなすばらしいメッセージ性も含まれていて、この歌うたいの人はものすごい才能を持っているなあ、と感動したものでした(恥ずかしながらそれまでフィル・コリンズの曲はあまり聴いていなかったもので)。過去、ディズニーが大物アーティストを起用した例はこれ以前にも、「ライオン・キング」でエルトン・ジョンが参加し、かなりの数の楽曲を提供したことがあったのですが、どちらかというとディズニー・ミュージックではなく普通にエルトン・ジョンの曲、というイメージが強かっただけに、ターザンでの仕事は驚きを隠せませんでした(You’ll be in my heartなんて、近年のディズニー・ミュージックの中でも光ってると思いますよ)。

で、この「ブラザー・ベア」。感想はと言うと、近年のストレートな作品(=リロ&スティッチとラマになった王様を除く、という意味)としては悪くはないと思います。ディズニー映画のファンか、フィル・コリンズのファンか、またはその両方ならば見に行っても損はないと思います。つまり、一般ウケを狙うにはなかなか難しい作品ですね。むしろファミリー色を強めたリロ&スティッチ等の方が、興行成績的には貢献したのではないかと思います(その後の商品販売とかテレビ展開も含めてね)。

ただし、この作品、きらりと光るものは確実にありました。たとえば、画角を利用した演出。ネタバレになるかどうか分かりませんが、主人公があるきっかけで大きな変化が起きた時、観客にも分かるように「大きな変化」が現れます。これはディズニー長編アニメーションとしてはなかなか面白いことをやったな、と(多分映画史としては使い古された手法ではないかと思うのですが)。ただ、これ我が家で最初に見たのがテレビサイズのDVDだったので言われるまで気がつきませんでした(笑)。また、ディズニーで動物と言えば擬人化して二本足で歩いて・・・みたいなことを言われますが、擬人化されていないクマの描写はさすがです。それだけにその後の擬人化したときのギャップがすごくて子供たちが混乱しそうな感じもしますが、冒頭に登場するクマ=モンスターの姿は圧巻です。過去同じようにクマをモンスター的な描写をした作品がありました。それは「きつねと猟犬」。この作品も興行的には大成功したわけではありませんが、ディズニー・スタジオの新旧アニメータの交代が行われた象徴的な作品でした。このとき参加していたのは野獣やアラジン、ターザンを描いたディズニーのトップアニメータのグレン・キーンやピクサーの中心メンバーのジョン・ラセター、そして鬼才ティム・バートン。もしかしたら、この作品からも数年後にはそのようなアーティストが出てくるといいな、と思ったシーンでした(事実、今回の監督の一人アーロン・ブレイズはグレン・キーンの愛弟子だそうです)。

反面、個人的に期待していたフィル・コリンズ色が想像以上に押さえられていたことは残念でした。オープニングのティナ・ターナーによるメインテーマは神々しいイメージが存分に現れていて身震いするほどですし、主人公が小クマのコーダに真実を告げるシーンの「No way out」はまさにフィル・コリンズ!でしたが、もう2〜3曲あってもよかったかなあ、と。ただ、この辺はストーリーありきで、意味もなく曲を出すと言うことを良しとしない判断があったのだろうとは思います。で、そのストーリーなんですが・・・骨子となるのは家族愛とサークル・オブ・ライフで、それぞれターザンやライオン・キングで語られてきた普遍的なもので、方向性は間違いないけれどもやっぱり詰めが甘いという印象です。今のストーリーですと、なぜ主人公があのような試練を負うことになるのかがよく分からないのが正直な感想です。

ここ最近のディズニー映画は、トレジャー・プラネットなど、もう少しストーリーが練られていれば名作の仲間入りしてもおかしくないような佳作が続いています。次の映画こそもっと楽しいコラムを書けるようになって欲しいと願いつつ、そのDVDに収録されていた、噂の初のディズニー製フルCG次回作「Chicken Little」の予告編を見て、がっくりとうなだれてしまったkyokuchoでした・・・。ホーンテッド・マンションに期待しようっと(笑)。

では!

(kyokucho/宮田 健)

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