こんにちは、kyokuchoです。
とうとう日本でも「Mr.インクレディブル」が公開となりました。ピクサー作品最新作にして、知る人ぞ知る名作アイアン・ジャイアントを創り出したブラッド・バード監督による待望の作品です・・・と、この作品のインプレッションはネタバレにつながってしまうのでここでは書きません。私もこの上映のためにいっさいの情報をシャットアウト、おかげで本当に楽しむことが出来ました。で、今回は?というと、この映画で「ニヤリ」とするための小ネタをとりまぜつつお送りしましょう。
話はウォルトが活躍していた時代にさかのぼります。白雪姫やピノキオ、そしてファンタジアなどディズニー映画の黄金期を支えた、ウォルト・ディズニー・スタジオの中核メンバーを、ルーズベルト大統領が最高裁判事達につけた愛称にならい、ウォルトは「ナイン・オールドメン」と呼んでいました。そのメンバーはこの9人。
レス・クラーク
−ミッキー(蒸気船ウィリー)、ミニーなど
マーク・デービス
−ピーター・パン(ティンカー・ベル)、
101匹わんちゃん(クルエラ)カリブの海賊など
オリー・ジョンストン
−白雪姫、ピーター・パン(ミスター・スミー)、わんわん物語など
ミルト・カール
−白雪姫、眠れる森の美女、ジャングル・ブックなど
ウォード・キンボール
−ピノキオ(ジミニー・クリケット、フック船長)、ダンボなど
エリック・ラーソン
−ピノキオ(フィガロ)バンビ、シンデレラ、ジャングル・ブックなど
ジョン・ラウンズベリー
−ピノキオ、ピーター・パン、わんわん物語など
ウーリー・ライザーマン
−眠れる森の美女、王様の剣など
フランク・トーマス
−白雪姫、わんわん物語、きつねと猟犬など
これらの名前は知らなくとも、代表作品やキャラクターを知らない人はいないでしょう。この9人の「魔法使い」ですが、彼らは後進を育てることも忘れてはおりません。公私ともに仲のよかったフランク・トーマスとオリー・ジョンストンはアニメーションの教科書ともいえる「Disney Animation: The Illusion of Life」(残念ながら邦訳版は絶版のようです)を製作しました。そして、ミルト・カールは14歳の少年に自分の技術をたたき込みます。その14歳の少年、その時点にしてすでにアニメーション作品を創り出しており、スタジオも認める神童・・・その少年の名前は、ブラッド・バード。そう、Mr.インクレディブルの監督その人なのです。
師匠、ミルト・カールだけではなく、ブラッド・バード作品とナイン・オールドメンの関わりは非常に強いのです。実は、今回の作品では、ディズニーマニアだけがニヤリとするあるシーンがあります。まず間違いなくほとんどの人が印象なくすぎてしまうだろうと思われるそのシーン、実は登場しているのが上記ナイン・オールドメンのフランク・トーマスとオリー・ジョンストンなのです。それも顔だけではなく声までも!どのシーンかはここでは書きませんが、見ていたときにそのシーンで「あれ?」と思い、スタッフロールのクレジットを見て確信しました。実はこの二人、前作アイアン・ジャイアントでも友情出演していたというブラッド・バード監督の心憎い演出にちょっぴり感動してしまいました。ナイン・オールドメンの心意気を、最新のコンピュータグラフィックスを使って仕上げる・・・なかなか感慨深いです。
そして映画の舞台。この映画自体は60年代をベースとしていながら、実際にはあり得ないようなハイテクカーが存在したり、007顔負けの秘密基地のある島が登場。現代の描写なども古き良き時代に夢見た「当時の未来」が舞台になっているのが非常に興味深い点でした。
シュレック2など、ドリームワークス作品はあまりにもポップにベクトルが向いている関係で時事ネタギャグで笑いを取ろうとしている反面、ピクサーは昔のディズニー作品のように、いつまでも輝きを失わないような、人間や社会が持つ根本的なものをテーマとして作ることが本当に上手です。ナイン・オールドメンによってまかれた種をそのまま見せるのではなく、ブラッド・バード監督のエッセンスをしっかり入れてきたまごうことなきピクサー作品。ウォルト・ディズニー・スタジオとはちょっと違った雰囲気を感じることが出来ました。本当におすすめの作品です。
では!
(kyokucho/宮田 健)