完売のあとに注文が殺到
PowerBook 2400用と1400用G3カードが、納品から1週間かからずに完売しました。それだけPowerBookユーザーがG3カードへの期待が高ったということでした。
そして、G3カードを手にしたユーザーが”NUpowr G3は最高だ!”という高評価がファンサイトや掲示板でなされると、完売後1ヶ月もしないうちに購入出来なかったユーザーから注文が殺到したのでした。その数1,000件以上。
しかし、残念ながらNUpowrを売りたくてもすでに在庫は無く、追加生産をする予定もありませんでした。
追加生産をしない理由
日本IBMへ追加発注をした場合、製造に最短で2カ月、輸送その他を入れると2カ月半から3カ月はかかります。
この間にアップルが安価なPowerBook G3を発売したら、またはインターウエアやソネットからPowerBook用G3カードが発売されてしまったらユーザーはそちらに流れてしまいます。
よって追加生産をするには、このリードタイムが長いことがリスクだとNewerは考えていました。
これだけ生産日数がかかるのは、日本IBMの生産能力が低いからなのではなく、1000本や2000本という”少ない”生産数量を生産ラインに割り当てるのが難しかったためです。少量生産は大きな数量の生産と生産の間まで待たないといけないという事情がありました。
しかし日に日に増えていく注文数を見ていると、注文に応えないといけないという義務感や、儲けを失いたくないという営業的な気持ちや、そしてリスクなんて大したことはないという慢心がNewerの会社内に漂っていきました。
結局、追加生産を決断
そして、追加生産をする決断がなされました。今度こそ最後の生産になるはずだから、多少多めに生産しておこうということになりました。
結局、PowerBook 2400用G3カードを2000本、1400用のG3カードを5000本という追加のオーダーを日本IBMに入れたのでした。
しかし、この数量が全くの読み違いでした。
1998年11月に日本IBMからG3カードが納品された時、すっかり市場が冷めており追加生産した約半分の3000本が売れ残ってしまいました。
この市場が冷めてしまった理由としては、PowerBook 2400用G3カードがインターウエア社から、PowerBook 1400用G3カードがソネット社から発売されたため、Newerにあった注文がそちらにながれてしまったためでした。
これは定価換算で3〜4億円以上の在庫です。この売れ残った在庫で初回の生産分で上げた利益がすべて水の泡となりました。
当初懸念していたリスクが事実となってしまったのです。
好景気が一転して赤字に転落してしまいました。
在庫をなんとしても売りきらなければ
この在庫をなんとか売り切らなくては行けない。特にNUpowr G3 for 2400は日本市場の製品ゆえに、担当者である自分はプレッシャーを強く感じておりました。
日々、日本の代理店に値下げをするので買い取って欲しいというような営業を行ったものの、ちょっとやそっとの値下げでどうにもならないほど市場は冷え切っていました。
在庫処分を試みてから1ヶ月。1998年の年末になっても在庫数はほとんど変化はありませんでした。
そして、1999年Macworldサンフランシスコで極秘に新しい打開策を模索することになります。
第8話に続く。