kyokucho/宮田健の気分はブルースカイ:第52回 失われたコミュニケーションを発見する場所

気分はブルースカイ

こんにちは、kyokuchoです。

さて、皆様はマックメムさんで何か購入したことがありますでしょうか。まだの人は今すぐなんでも買ってみてください(笑)。すると、びっくりするくらい「人間味のある」オーダー完了メールが届くと思います。たぶん皆様も初めてオンラインオーダーをするわけではないと思いますので、他の会社のメールを見たことがあるかとは思いますが、マックメムさんの場合は「本当に1通1通書いてるんじゃないか?」と思うような内容のメールが届きます。それだけでとってもうれしい気分になってしまいます。これ、重要なことですよね。

東京ディズニーランドがオープンしたとき、他の場所とは異なっている点としてよく挙げられたことが「お弁当を持ち込んではいけない」そして「自動販売機が存在しない」。特に弁当の持ち込み禁止は多くのマスコミのツッコミどころだったようで「これは高い食事を食べさせるためのルールだ!」というような報道のされ方をしていた(それに私たちもそうだと思ってた)と思いますが、これもパーク内の「テーマ性」を維持するためのルールで、日本人は道ばたでビニールシートを引いて弁当を食べ始めてしまうと考えていたため、それだと西部の開拓地や未来の世界が一気に「日本」になってしまうための禁止事項だったそうです(さらに、弁当を持ってきたご家族のために、ちゃんとパークの外にピクニックエリアが今もあります)。

で、自動販売機。これは意識していないと気づかないのですが、オープン当初は本当に自動販売機が存在しませんでした。園内をどれだけ歩いてもジュースやたばこ、両替機のたぐいはいっさいありません(ただし、現在では便利な「ファストパス」発券機がありますが)。これは上記のようなテーマ性なのか?と思ったのですが、それであれば、パーク内に大量に設置されているゴミ箱のように姿形を工夫することで置くことも可能だったかと思います(これも意識して見ていると、驚くほどの種類のゴミ箱があることが分かるかと思います。ぜひ次に訪れたときにチェックしてみてください)。でも、東京ディズニーランドはそれをしませんでした。これは、人と人とがふれあう場所を多くすること、コミュニケーションの発生回数を増やしたいからという意図があるのではないかと思います。

たとえば、東京ディズニーランドでもっとも簡単に省力化が可能だと思われる場所、入り口のチケットブースを見てみましょう。チケットの種別など数種類しかないわけですから、こんなところは電車の切符売り場のように自動販売機を置いてしまえばこの場所に行列も出来ませんし、人件費だって浮かすことが出来ると思います。事実、他の水族館や動物園、美術館などはどんどん自動販売機化しているように思えます。でも、東京ディズニーランドはそれを21年間もやっていないし、おそらく今後何十年も今のままだと思います。

これは、ディズニーが「ここは人間がやらなくてはいけない」ということを信念として行っているからです。ディズニーテーマパークのチケット販売マニュアルには、まず「あなたの仕事は、チケットを売ることだけではありません」と書いてあるそうです。続けて「あなたの仕事は、パークに遊びに来るゲストと最初にコミュニケーションをとることです」と。彼ら彼女らの仕事は、まずあなたの口を開かせ、会話をすることなのだそうです。ですから、チケットブースではマイクを使ってみんなとお話しするという光景が見られるのです。これによりゲストは思わず会話が弾み、非現実な場所に入る準備が出来ますし、キャストもマニュアルの通りにするとみんなが楽しんでくれて、かつ自分も楽しくなる。この辺はまさにディズニーのテクニックであり、マジックです。

都心部では、今ではなかなかお隣さんなど、街中でのコミュニケーションが疎遠になってしまっているかと思います。それにいわゆるオンラインショップなどが増えて、どんどん表面的なふれあいしかない世の中になりつつある中、こういうものを大事に大事にしている企業もあるというのは、とても救われた気がします。ただ、これは裏を返すと、少し前だったらどこにでもあった風景だったということ。子供の頃によく通った駄菓子屋のおばちゃんとの会話、商店街でのかけ声とそれに答える人たちという光景。便利になった世の中は気づかないうちにいろんな物を捨ててしまってきたのかもしれないですね。

では!
(kyokucho/宮田 健)

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