年俸交渉は年俸の低い順番に行われ、大物は一番最後。
横浜DeNAベイスターズのシーズンが終わり自由契約となって去っていく選手達がいます。そして残った選手達と翌年の契約が行われます。
この契約時に年俸が決まるのですが、この契約の順番は年俸の低い選手から始まり、一番年俸の高い選手、ベイスターズの2020年の場合であれば宮崎敏郎選手・佐野恵太選手・三嶋一輝投手があたり最後となるはずです。
この契約更改の順番にはちゃんとした経済的な理由があります。
人は自分だけでは自分の価値がわからない生き物
人はいくつかの性質をもっていますが、その1つに《比較することが得意だが、絶対値を知ることが苦手》という性質があります。
これを簡単に《1パック200円で販売されているポテトサラダを買う場合》に例えてみます。
お店はポテトサラダはできるだけ同じ重さが入るようにしていますが、1パック毎に多少の誤差があるとします。
買い物上手の奥様が2パック手にして、どちらが重いかを比べてみるとかなりの高い確率で重い方を当てることが出来ます。鋭い奥様になると1gぐらいの違いがわかったりします(苦笑)。
一方で奥様に1パックだけ手にとってもらい、これは何グラムか当ててくださいと尋ねると、とたんに答えられなくなります。
つまり人は、どちらが重いか比較するのは簡単でも、1つだけの重さを知ることは難しいのです。
選手にふさわしい年俸はいくら?
チームのオーナーは選手の全てのデータを比較し、チームの予算をどのように分配するか考えて、大まかな選手全員の年俸を決めることが可能です。
一方で、選手は自分がどのような年俸がふさわしいかを判断するのが難しいです。そこで通常は昨年の自分の成績と比較をして上なら年俸が上がると考え、下なら下がると考えます。
そして、いくらぐらい年俸が上がるのか下がるのかを考える時には他の選手と比較します。
「彼より自分のほうが打率が上だから自分のほうが年俸が高くなるだろう」とか、「彼よりも自分は出場試合数が多かったのだから自分のほうが年俸が高くなるだろう」という感じで比較するわけです。
人は聞いた数字に引っ張られる
ところで、こんな心理実験があります。
「国連加盟国のうちアフリカの国の割合は65%よりも大きいか小さいか」と尋ねると小さいと答える割合が多く、数値を尋ねると45%付近を答える人が多くいました。
一方で、「国連加盟国のうちアフリカの国の割合は10%よりも大きいか小さいか」と尋ねると大きいと答える割合が多く、数値を尋ねると25%付近を答える人が多くいました。
最初に65%と聞かされた人は比較的近い45%と答え、最初に10%と聞かされた人は比較的近い25%と答えました。つまり人は最初に尋ねられた数値にひっぱられる傾向があるのです。これをアンカリング効果と言います。
選手は低い年俸にひっぱられる
そこで、オーナーはこのアンカリング効果を狙って最初に安い選手の契約を行いその金額を発表します。するとその後に契約をする選手は前の選手の金額に引っ張られてしまう、つまり安い年俸で契約してしまう傾向になります。
これが逆だったら大変です。最初に一番活躍した筒香に対して5億円の契約を発表してしまったら、後で契約する選手は全員その数値に引っ張られますから、ソトもロペスも宮崎も4億円ぐらいもらえるはずだと思ってしまいます(実際にもらってもいいぐらいですが)。そして、4億円くれないなら契約しないとゴネだすことになるでしょう。そうならないためにも高い年俸の人は後回しにするわけです。
代理人が必要
こういう心理戦を考えると、ある程度の高額の年俸の選手は代理人を雇ったほうが絶対にいいはずです。客観的に選手の価値を判断して交渉しないとオーナーのいいように契約させられてしまいますから。
なお、来年こそは\横浜優勝/