1998年のことだったと記憶しているのですが、自分がNewer TechnologyというAppleのサードパーティで働いていた時の話です。(Newerでの顛末はプロジェクトNというシリーズにまとめてあります)
NewerのG3カードのパフォーマンス
1998年当時のこと。NewerはPowerMac用のG3カードを開発・製造・販売をしていました。価格はCPUとバックサイドキャッシュメモリーの容量によって異なりますが、1枚およそ10〜20万円でした。CPUカード1枚がそんな値段なんて、現在ではとても考えられないかもしれません。
ただ、このPowerMac用のG3カードのパフォーマンスは大変素晴らしく、既存のPowerMacの処理能力を倍にすることができました。その当時世界で一番早いパソコンはNewerのG3カードを装着したPowerMacだったのです。
ちなみにMac本体はさらに高額で、PowerMac 9500は70万円ぐらいしていました。ですので、G3カードに20万円を投資しても、処理速度が2倍になるのであれば安い買い物だと言うことが出来ました。
ナムコのゲーム開発者からのメール
さて、そんなある日、私宛に日本語でじきじきにメールが届きました。メールを開いて見るとナムコのゲーム開発者の方でした。
メールの内容は、PowerMac 9500用のG3カードが欲しいのだけれど、予算が限られているので米国から直接購入することは出来ないかという相談でした。
Newer製品の日本での価格
ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、米国の製品を日本で大々的に販売する場合には代理店が必要です。
米国の会社は量販店等に製品を納品するツテがありませんので、そういう販売チャネルをもつ商社や代理店を経由してはじめて日本のお店に製品を並べることが可能になります。
また、代理店は日本語のマニュアルを作ったり、故障時の対応をするような作業も行いますので、そういうコストが製品に上乗せされます。その結果、米国の定価よりも1.5倍、時には2倍ぐらいの価格になってしまいました。
その当時のNewerのG3カードの米国の価格が10万円だとすると日本では15万円とか20万円で販売されることが普通でした。
G3カードを直接Newerから購入できないか
ナムコのゲーム開発者の方は、開発で使うPowerMac用G3カードが欲しいのだけれど日本で定価で購入する予算がなかったので、米国価格で直接Newerから購入できないかというご相談でした。
本来メーカーが日本のユーザーに対して直接販売をしてしまうと、代理店との契約違反になりますからそれはご法度です。
ただ、相手は日本の一流メーカーの開発者からの申し出なので、なんとかしてあげたいと思うのが人情というものです。
そこで、その旨を上司に話をすると、同じメーカーという立場として、なんとか力になってあげたいという話になりました。ただ、代理店との契約上、直接販売することは出来ないわけです。だったら販売をしないで、うちのG3カードとナムコの製品と物々交換したらどうだろう?という話になりました。
その旨をナムコさんに話をしたら快諾してくれて、ナムコの製品リストと社内での割引価格を提示してくれました。
何と交換するか検討に検討を重ねるw
もともとNewerはMacとゲームが大好きな会社です。ゲーム大会の話は以下にありますので、よろしければ読んで下さい。
セールス・マーケティング部門の上司のジェフ、技術担当の親分CTOのロジャー、あとNewerのゲーム好き数人と一緒になって、ナムコから提示された製品一覧をみながら喧々諤々、真剣に検討して以下を選びました。
プレステ本体 1台
ガンコン 2台
タイムクライシス
リッジレーサー4
エースコンバット
日本のナムコからゲーム一式到着後、すぐに会議室のモニターにゲームを設置し、Newer全員でゲーム大会で盛り上がったことは言うまでもありません。
ウィン・ウィンの物々交換となりました。