Amazonプライム・ビデオで「アンダン ~時を超える者~」なるドラマを見ました。
大変興味深いドラマでした。ちょっと不気味な感じで進行していくストーリー。ツイン・ピークスと同じような雰囲気を持っています。
このドラマ、一応アニメなのですが”ロトスコープ”という手法で描かれたものです。これは、実際のドラマを撮影した上で、そのフィルムからアニメにおこす方法です。ですので、すごくリアルなアニメです。
実際にドラマを撮影したなら、アニメにするような回りくどいことをしないで、撮影したものをそのまま放映すれば良いように思うかと思います。でも、アニメにした絶対の理由があります。
それは、主人公の女性アルマがタイムスリップをする時、またはタイムスリップ先から現在に戻る時の描写がアニメであるおかげで違和感なく受け入れられるからです。
タイムスリップの表現が見事
主人公のアルマは交通事故によって、タイムスリップの能力を身につけます。正確には、もともとあったタイムスリップの能力があらわになったというほうがいいかもしれません。
事故後の入院先の病院で、そのタイムスリップによるループのはざまで、死んだ父親に出会い、自分を殺した殺人犯を探して欲しいと懇願されます。
当初アルマはタイムスリップをコントロールすることが難しく、夢と現実を行き来するような感覚に陥ります。このドラマを見ている側もアルマと同じように、夢と現実の区別がつかなくなってしまいます。
この夢(タイムスリップ先)から瞬時に現実に戻る描写や、またその逆の描写がアニメでないと表現できないと思うのです。
自分が寝ている時にみる夢の中で、あることをしていても次の瞬間には別の場所にいたり、別のことをしていたりします。でもそれは夢の中では普通のことで、そのトランジッションって本当はありえないはずなのに自分で普通に受け入れています。
例えば、以下のカットはタイムスリップ先でクルマの衝突事故にあうシーンのものなのですが、アルマがクルマから放り出されている時点で、着ているものがすでに病院服になっていますし、周りに壊れた病院の壁や天井が描かれています。
これを実写でやったとしたら、すごく違和感が出てきてしまいます。これをアニメで描くから、これは現実ではありませんというメッセージを観客に伝えることが出来るわけです。
父親を殺した犯人は
さて、ストーリーはミステリーとしては秀逸で、犯人が誰なのか気になって引き込まれてしまいます。
全8話なのですが、自分は途中で観るのをやめられず、一気に観てしまいました。
ここではネタバレになるので言いませんが、父親がどのように死んだのかがはっきりして、なるほどそうきたかと感心してしまいました。
アルマはタイムトラベラーなのか、統合失調症なのか
それで、このドラマを見ていて考えさせられたのは、自分の知人が「自分は死んだ父親と会話が出来るし、過去に戻ることが出来る。」と言ったとしたらそれを、素直に信じることが出来るだろうかということです。
アロマの言動・行動・見ているもの全てが、他者から見ると統合失調症そのものなのです。
突然誰もいない相手に話かけたり、包丁で指を切ったり、鏡の中に飛び込もうとしたり、同じことを言わないで(自分はループの中にいると感じている)と訴えたりするわけです。
そのくせ、自分はおかしくない、自分は正しい、統合失調症ではないから薬は飲まないと言うのですから、交通事故によって何か脳に障害をおったとではないかと、まわりの人が心配するのは当然のことです。
最終回の8話でストーリーはほぼ完結するのですが、アロマが本当に正常だったのか、実はただの統合失調症で夢を見ていただけなのか、観ている側も不安になります。よって爽快感全くなし。どよーんとして感じで終わることになります(一応次のシーズンに続く的なエンディングになっていますが)。
ただ、このドラマは、描写もストーリーもかなり実験的で、興味深いことは間違いありません。
好き嫌いがはっきりしそうなドラマですが、よろしかったら観てみてください。